4.0
水彩、カラーインクのにじみ、ぼかし
ひさびさに名前を見たので、これは行かなければと思いました。
70年代、80年代には水彩、カラーインクのにじみ、ぼかしをいかしたイラストレーターが多く、そのころによく見ていました。
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ジャン=ミッシェル・フォロン(Jean-Michel Folon, 1934-2005)は、20世紀後半のベルギーを代表するアーティストのひとりです。若き日に偶然出会ったマグリットの壁画に感銘を受け、絵画世界に惹きつけられたフォロンは、1955年に移住したパリ近郊でひたすらドローイングを描く日々を送ります。
フランスではなかなか芽が出ませんでしたが、作品を投稿したアメリカの『エスクァイア』『ザ・ニューヨーカー』『タイム』などの有力誌で注目され、1960年代初頭にはそれらの表紙を飾るようになります。その後、オリベッティ社(イタリア)のグラフィック・デザインを任されたり、ミラノ・トリエンナーレ(1968年)のフランス館で壁画を依頼されたりと活動の幅を広げていきました。続くヴェネツィア・ビエンナーレ(1970年)やサンパウロ・ビエンナーレ(1973年)へのベルギー代表としての参加や、各国の美術館での個展の開催など目覚ましい活躍をみせます。世界中で高い評価を得たその活動は、版画や水彩画、ポスター、文学作品の挿絵や舞台美術など多岐にわたります。
色彩豊かで幻想的な詩情あふれるその作品は、一見すると美しく爽やかにさえ感じられますが、そこには環境破壊や人権問題など厳しい現実への告発が潜んでいます。後年手がけた彫刻作品にも、孤独や不安といったそれまでのグラフィック作品に通底するフォロンのメッセージを読み取ることができるでしょう。
本展はフォロンの初期のドローイングから水彩画、版画、ポスター、そして晩年の立体作品までを含めた約230点を紹介する、日本では30年ぶりの大回顧展です。デジタル化やパンデミック、戦争など、社会的に大きな曲がり角にある現代、環境や自由への高い意識をもち、抑圧や暴力、差別などに静かな抗議を続けてきたフォロンの芸術を、いま、あらためて見直します。
会期 | 2024年7月13日(土)~2024年9月23日(月・振) |
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会場 | 東京ステーションギャラリー Google Map |
住所 | 東京都千代田区丸の内1-9-1 |
時間 |
10:00~18:00
(最終入場時間 17:30)
|
休館日 |
月曜日、7月16日(火) ※ただし7月15日、8月12日、9月16日、9月23日は開館 |
観覧料 | 一般 1,500円(1,300円) 高校・大学生 1,300円(1,100円) 中学生以下 無料
|
TEL | 03-3212-2485 |
URL | http://www.ejrcf.or.jp/gallery |
割引券 | http://www.ejrcf.or.jp/gallery/campaign.html |
4.0
ひさびさに名前を見たので、これは行かなければと思いました。
70年代、80年代には水彩、カラーインクのにじみ、ぼかしをいかしたイラストレーターが多く、そのころによく見ていました。
4.0
リトルハットマン、矢印、といったモチーフで絵のテーマを自在に表現する。これは妙技です。長い画歴の早めの時期に、これらのモチーフを着想し生涯の伴としたこと、ある種の芸とも感じました。
彩度高いシルクスクリーンやカラーインクの作品群と、淡色グラデーションが美しい水彩の作品群。私は前者が好みでした。ブルー使いが特に印象的。
現代社会や都会への戸惑い・混迷・不穏といった心情表現の作品群は、ポップにして寓意の展開に味があって、とても魅力的です。一方、戦争や差別といった社会問題をストレートに抗議する作品も多数あり、1970~80年代のアートの流れとして受け止めました。
オリベッティの仕事の作品群は、脂が乗っている時期の制作なのでしょう、洗練されていて素敵です。また、マグリットのシュールが混じる作品(そういえばベルギー)や、神奈川沖浪裏風の作品もあり、面白い。等身大リトルハットマンのブロンズ像オブジェ《秘密》で本展の最後を締め括る展示ストーリーも気に入りました。
チラシが3種類用意されていて、良いお土産でした。
5.0
約300点の作品展示。水彩画はもちろん彫刻やオブジェ的な作品もあったり、来日時のインスピレーションから、日本の切手や写真を使った作品もあってとても興味深い展覧会だった。
色使いはこの作家の最大の特徴だ。
とても親しみやすく、どんな見方も受け入れてくれそうだ。
会期終了が近い。お見逃しなきよう。
4.0
旅の選択肢にふさわしく、タイミングよく鑑賞する事が出来ました。ほんわかとしつつ鮮やかな色彩で「共に想像旅行へ出かけませんか?」なんて思っていたら、厳しい現実への嘆き怒り悲しみ、平和への願いや思いが強く反映されていて、少々戸惑いましたが、こういう雰囲気だからこそ素直に観られたのかもしれません。東京駅丸の内駅舎内の雰囲気も良かったです。
4.0
一見シンプルで可愛らしい絵柄、だけど毒もある。
中期のニューヨーク時代の絵からは都市生活の孤独や憂鬱、強迫観念のようなものも伝わってくる。
意外にも政治や社会的なメッセージが強い絵が多いのはそういう広告関係の仕事が多かったせいか。そういう時代だったせいか。
ブラッドベリの火星年代記の挿絵も描いていたそうで、それは透明感のある作風がマッチしていていいなと思った。
個人的には旅先などから出された封筒の絵が印象に残った。
ただ楽しんで描かれている感じがして良い。
淡いグラデーションの水彩画の色使いが美しかった。
4.0
ジャン=ミッシェル・フォロンは、71歳まで生きたので、その画業は結構長いのですが、その作風は生涯一貫していたようです。
ブルーを基調にグラデーションを描き、オレンジなどの暖色をポイントとして配置する構成と色彩は、ほぼ共通します。
そしてリトル・ハットマンと呼ばれる人物を登場させて、無表情ながら、物語やテーマを無言のうちに語らせます。
そんな手法を確立させてからは、フォロン自身がリトル・ハットマンとして変幻自在に姿を変えながら、空想世界を自由に旅行しているかのような作品を生み出し続けます。
環境破壊や人権問題など社会問題にも関心を持って、作品のテーマとしてきましたが、作風は一貫して変わらなかったようです。
リトル・ハットマンの空想旅行に没入できる展覧会です。
4.0
水彩の明るい色調で、都市の孤独や窮屈さ、環境問題、戦争、人権といった重いテーマを扱う。明るい絵なんだけど、孤独や不穏を感じさせられる。リトル・ハット・マンは、そんな世界を見つめる自我みたいなものか。結局自分は自分ひとりしかいない。一番最後の「対話」というタイトルの作品に惹かれた。大きな世界の中でポツンと一人、世界あるいは宇宙と一緒になった自分と向き合う。自分は世界の一部であり、ということは世界は自分の一部である。梵我一如。フォロンがそんなことを考えていたのかは知らないけれど。
5.0
酷暑の夏には、東京駅直結の東京ステーションギャラリーは避暑にもってこいの癒しの美術館です。
パリオリンピックの真っ只中に訪問しました。
パリオリンピックを彩る大会のグラフィックの色彩がとても綺麗で、東京とはまた違うフランスの伝統色の色合わせが素敵でした。
話はそれましたが、ジャン=ミッシェル・フォロンはベルギーで生まれ長くフランスで創作活動を続けていました。私は『タンタンの冒険』シリーズが大好きで、なんだかそんなエッセンスも感じたり、でもちょっとシュールでクスッと笑ってしまうようなギミックがあったりと、ちょっと清らかに濁る色彩の美しさと彼のイマジネーションをたくさん浴びて、体温超えの屋外とは真逆の心地よい空気感に包まれました。
4.0
初めて名前を聞くジャン=ミッシェル・フォロン。
ベルギー出身のアーティストということだが、今まで知らなかったのがもったいない!と思う位、インパクトある作品たちだった。
「空想旅行案内人」というタイトルからほんわかした作品ばかりなのかと思いきや、環境問題や人種差別、冷戦という現実的な問題を提起するメッセージ性が強い作品が続くセクションもあり、単純にのどかな気分になるのでなく時代の抱えるテーマを考えさせられた。
さらに晩年の内省的な心象を表す作品は、水彩のグラデーションが幻想的で美しく、どこか切なさもある世界でより普遍的なメッセージを感じた。
もしも今後どこかで彼の作品を見つけたら、「ああ、フォロンか!」ときっとすぐにわかると思う。回顧展で一気にまとめて観る機会が得られてよかった。
5.0
20240725
淡い水彩画が素敵と思って行ったが、細かく見るとこれまた心惹かれるものばかり。
帽子の男がこちらを見ている絵は、サングラスかとおもったら目が口になっていた。
青も微妙にみな違う色で、ふぅんと思う。
静かな絵だけど、ささやきが聞こえる。
3.0
見たことがあるような気もするけどおそらく初見の作家です。
フォロンはインクのドローイングがとても良いですね。
後半に展示されていた水彩も柔らかで優しげな雰囲気で良いです。
あと数は少ないけど写真作品にも惹かれました。
環境や戦争、社会問題にも目を向けた作品群にはピンとこず。
出品数もかなり多くて充実の大回顧展と呼んで差し支えないと思います。
膨大な仕事量があったからこそ空想でどこまでも飛び立てたのかも。
結構観客が入っていて人気の作家なんですね。
4.0
ファンタジーチックな色調や優しい線だけど、ちょっと寂しくシニカル。
ポスター等で70年代80年代は活躍していたので当時よく目にしていたが、本当に久しぶりに晩年までの作品群に会えた。
色彩のマジックは古くならず、独特の線の走りもうならせられる。アイディアも仰々しくないけど鋭い。
不思議な頭部を持つ彫刻や船のコラージュ作品を観られたのはとても嬉しかった。
優しいテーマもあるけど、けっこう皮肉や風刺の作品が多かった気もする。それは確かにフォロンの魅力だけど、ちょっと作風ごとに並べすぎて、偏りが生まれてしまう気がしたのは残念。
もっと商業的なポスターを観たくもあった。
7月18日(木)11時入館。ちょっと混雑(特に入口付近)。撮影不可。
4.0
ファンタジックなものを予想してたら
乾燥した、無機的で虚無に満ちた
惑い(迷い)が画面いっぱいに広がっていた
これは面白いな。矢印や都市なんかはわかりやすいけど
自分が何者でもなくどこに向かうでもなく何を、どこに行けばいいのかすらわからない
そういったここにいるけどいないもやもやとしたものを強く感じる
それだけに環境や反戦といった「方向づけられてしまった」作品は
正直個人的にあまり刺さらない。わかりやすくなったがゆえに魅力が薄れ
紋切り型の平凡に終始してまったかのような残念さすら感じてしまう
どちらが好みかは人によるとは思うけど
どこに向かえばいいかわからない四方八方に矢印が向いているような作品のほうが好みだった
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