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日本人好みの心象風景と画家の人生
日本で根強い人気を誇る画家モーリス・ユトリロの、没後70年の回顧展です。波乱万丈の生涯、詩情豊かな「白の時代」の名画ほか、全画業を時系列に展観しています。
若い頃、たまたまユトリロ作品を多く所蔵する東京富士美術館が近くに出来、更にそのうち西山美術館も出来、おかげで低料金で随分気楽にユトリロ作品を見ることが出来ました。今展では随分と久々に、集中的にユトリロ作品を見ました。フランス国立近代美術館からの10点を核に、絵画版画作品が3つの時代区分に5つのテーマで紹介され、70余点、個人蔵作品も多くあり、なかなかのボリュームでした。それから、ユトリロと夫人が受賞したパリ名誉市民賞メダルほか、手稿・書簡などの資料や、ユトリロをについての雑誌記事などなども展示されていましたし、入場時に出品目録と一緒にユトリロの自伝手記を抜粋したミニ鑑賞ガイドも配られていました。作品だけでなくモーリス・ユトリロという一人の画家の人生が、時代背景の中で感じられる展覧会になっていました。彼が工夫して描いた建物の壁の質感も、ごく間近でじっくり見ることも出来、とても充実の内容で、良い展覧会でした。平日朝一で、開館前は少し並んでいましたが、中は混雑もなく、ゆっくりじっくり楽しむことが出来ました。一部を除いて撮影も可です。
都会の孤独と哀愁、日本人好みの心象風景、なんですよね。変わりゆく時代のパリっ子たちも、同様の感情で彼の作品を愛したのかも知れません。私個人は、ユトリロは、一部例外はあるものの、好みはほとんど白の時代のみです。パリの街の風景なら、少し後の夭折邦人画家佐伯祐三がとても好きです。或いはユトリロと同じエコール・ド・パリ時代の藤田嗣治の、少しデフォルメされひしゃげた建物がかもし出す独特な雰囲気が好きです。白い肌の美人や猫さんや働く子供たちなどより好きなんですが、展覧会ではあまり取り上げられていません。






