4.0
「存在とは何か」を追求した画歴、と納得するにはやや難しかった
神戸を基点に活躍された女性美術家。初の美術館での個展がいきなり大阪中之島美術館で昨夏に開催されていて、注目してました。根強い親派がいることの証。なので、宣伝用の写真ではわからない何かを持っているのだろうと期待し、埼玉巡回の会期終了間際に訪問。
20歳代から没年55歳までの約30年のキャリアを、約10年毎の3章立てでクロニカルに追う展示です。丁度それくらいの周期で、作風が大きく変遷してます。
20代前半からの最初の10年は京芸の学生時代から。具象・抽象あり、良い絵を描いてると思います。
次の10年。存在を追求すべく、写真・コラージュや幾何的図形表現に傾倒します。この時期の作品は、私には「存在」追求の表現として共感するのは難しいです。
円は斜め上から見ると楕円です、から、存在とは、に繋ぐ文脈がないと。写真作品も同様に、説明的・観念的。1970-80年代半の知を巡る当時の世相を思い返しつつ、時代感として受け止めるに留まりました。
最後の10年。このメタモルフォーゼの動機は何だったのでしょうか、大きな進化を感じます。言語化不要、観念無用、キャンバスの上が全て。これは観る者に訴求する存在追及です。
とりわけ、癌宣告を受けてから没年までの四年間の鬼気迫る抽象絵画表現、圧巻です。本展のキービジュアル写真では到底伝わらないパワーがみなぎります。描出したいコンセプトが「万物の存在」から「自己の存在」に、客観から主観に替わったが故の迫力なのかしら。
顕著なスタイル変化の背景には、プライベートなストーリーや葛藤の変遷がきっと強く影響していることと推察します。立派な大回顧展ですが、その辺りを掘り下げた文脈との照らし合わせがあれば、もっと良かったのではないでしょうか。(早逝作家の没後30年ではまだ日が浅いということか)