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あまりに幅広い画業、その変遷を知る絶好の機会
約7週間の短めの会期、その最終日午後に駆け込みで訪問できました。
堂本印象作品は色々な機会に目にするのですが、作風の違いが極めて幅広く、まるで同名の画家が何人もいるような感じ。画業変遷の理解が無いと、時に戸惑うように思ってました。その点で、本展は有意義です。
実働約50年の長い画歴を持つ大家です。古今東西、それだけ長ければ、変化はします。ピカソだって、ミケランジェロだって。でも、堂本印象の振れ幅は甚だしい。西陣織のデザイナーが、官展でいきなりデビューすると、北インドっぽい顔立ちの仏教画を作り、モダンな色遣いの写実的日本画、渡欧してからは、デフォルメ具象画、モンドリアン的色面画、アンフォルメル的なプロセス表現抽象、と。
40歳代、日本画家としての円熟期の作品には、実に見応えを感じます。メインビジュアル《木華開耶媛》の大胆な図像や明るく透明感ある色遣い。《雪》の雪の美しいリアリティ。樹下美人図から翻案した《實》で若娘を囲む葡萄の房。写実性と平面図案的な要素が同居する独特の非現実的な世界に、なぜだかスーッと引き込まれてゆく。
60代後半の色面画《意識》は、モンドリアン的と紹介されてはいるが、ミニマルに線と色彩に至るのとはかなり違うように思う。黒の描線は太細ある動感が残り、色面も幾何学的と言うにはうねりが強い。和絵具を吹き付けたような色面の表情も控えめに情緒的。好きな作品。
本展は時代順の展示構成となり、そのなかで変化変遷を、新たなものへの堂本氏の絶ゆまぬ挑戦心、という文脈で紹介しています。まあ、それはそうでしょうが、腹落ちするには至れず。もう少し各々の変化の背景や動機について理解を深めたい、と感じます。没後50年記念の大回顧展ということですが、殆どは衣笠の堂本印象美術館からの引越し公演。なので、いつか堂本美術館に出向いて、今回腹落ちに至らなかった宿題にトライしたい。





