ART BLOGS

アートブログ

日本で伝世した宋元の仏画にひたる秋の京都 「宋元仏画―蒼海を越えたほとけたち」@京都国立博物館

京都国立博物館で開催の特別展チラシ左から『日本、美のるつぼ』、『宋元仏画―蒼海を越えたほとけたち』と「京都国立博物館だより」2025年1,2,3月号 

秋の京都国立博物館の特別展は宋、元の仏画です。なんと渋い!

日本は仏教の伝来をはじめ、古くから大陸の文化を学び受容し、日本独自の文化としても伝えてきました。進んだ大陸の文物に憧れ、海を渡り学んだ先人たちも少なくありません。

仏教の伝来、遣隋使、遣唐使によって仏教文物も中国から日本へもたらされ、その後も貿易船に僧が同乗して中国へ渡り、寺院や高僧を訪ねて仏教を学び、聖地巡礼し、仏教文物が日本へ請来されました。本展は、そのうち宋・元時代の仏画に焦点を当てた展覧会です。

 

今、何故日本で「宋元の仏画」展を開催するのでしょう。

①    宋元絵画のうち、「仏画」で現存しているものの大半は中国ではなく、日本に残っています。

  • 古くなった仏画は新調されるのが一般的でした。
  • 中国国内の王朝の交代など社会変動や寺院の宗派が変わるなど、時代が移っていくなかで「仏画」は寺外に流出したり、そのまま滅びてなくなったりしていきました。
  • 一方日本の寺院は、古い時代の仏画を数多く大切に伝えてきました。舶載の宋元の仏画も大切に守られてきました。

②    宋元時代の仏画として稀少というだけではなく、日本の文化と深い関わりがありました。

  •  儀礼の本尊として各宗派で重んじられてきたというだけでなく、日本における仏画制作で規範性を担っていました。(根本図像、図様の転用など)
  • 貴重な舶載品(唐絵・唐物)として珍重され、将軍や大名に愛でられ、寺宝として現在にまで伝世されています。その多くは舶載品ながら国指定の文化財となっています。
  • 優れた芸術性によって日本の中世、近世の巨匠たちもお手本としてきました。

 

宋(960-1279)、(1271-1368)の時代をちょっとおさらい

(960-1279)繁栄を誇った唐王朝は、安史の乱や黄巣の乱で国内が混乱して朱全忠によって907年に滅びます。その後諸国が興亡する五大十国時代を経て、趙匡胤が960年に中国を統一した王朝が宋です。建国から北方の金に首都開封を陥落される靖康の変(「風流天子」と呼ばれた徽宗もここの変で北に連れ去られて金の地で病没)までを「北宋」、1127年臨安(杭州)への遷都以降を「南宋」とよびます。

北宋は、官吏登用制度である「科挙」が整い、文治主義を採用した官僚制による君主独裁体制を樹立しました。儒教的教養を備えた知的エリートともいえる「士大夫」階級が社会的支配層となり、学問や文学、芸術が洗練され高度な文化レベルに達しました。北宋時代は日本の平安時代中期から末期にあたり、東大寺僧の奝然らが経典や釈迦像など貴重な仏教文物を持ち帰り、以後宋をめざす僧侶が増えました。南宋では江南開発が進み経済的に発達しました。南宋時代は日本の鎌倉時代にあたり、より多くの日本僧が中国へ渡り、国際港の寧波に上陸し、寺院や仏教聖地を巡り、都杭州にも立ち寄り、禅や喫茶(抹茶)など日本にとって重要な仏教文化が南宋からもたらされました。

 

元(1271-1368)チンギス・カンがユーラシア草原地帯を支配下におさめる大帝国を建設し、五代皇帝クビライは、大都に遷都、1271年国号を「元(大元ウルス)」とし、1279年には南宋を滅ぼして中国全土を統一しました。国際色豊かで、多様な人材を登用し、南宋など旧体制をとりいれながら国家体制を整えました。元時代は、日本の鎌倉中期から南北朝にあたり、元寇の混乱も経て、特に禅僧の往来が盛んとなり、多くの文物が日本にもたらされました。

 

【本展の特色】

① 東アジア最高峰が集う、過去最大の「宋元仏画」展

宋元仏画は、宗教性と芸術性において高い水準にあり、「東アジア最高峰」と紹介されています。

② 雪舟や長谷川等伯、俵屋宗達など日本の絵師たちの作品も登場します。

「宋元仏画」は日本美術と深いつながりのあり、牧谿を筆頭とする禅宗絵画の水墨表現を日本の絵師たちが学び、傑作を生みだしました。

③ 京都会場のみの限定開催です。

展示件数は約150点、うち半数は国指定文化財で、みなさんもご存じの通り展示期間が限定されており、巡回はありません。

 

展覧会は7章構成です。

第1章    宋元文化と日本

足利将軍家の唐物コレクション「東山御物」など日本で高く価値づけされ、憧れ続けられてきた宋元文化を紹介します。

 

第2章    大陸への求法―教えをつなぐ祖師の姿

中国の祖師たちの肖像(頂相)を展示し、仏教先進国中国からの教えを引き継ぐ日本仏教。

                                   

第3章    宋代仏画の諸相-宮廷と地域社会

士大夫が支配階層となり知的な文化が醸成された宋時代に、宮廷がリードして芸術文化は円熟期を迎えました。そのような中で日本に残る仏画がいかに生まれてきたのかを見ていきます。

 

第4章    牧谿と禅林絵画

日本で最も愛された中国画家といえば禅僧の牧谿といえるでしょう。牧谿の作品を基軸に宋元の禅宗絵画の豊かな表現をたどります。

 

第5章    高麗仏画と宋元時代

朝鮮半島で栄えた仏教国家 高麗(918-1392)は、宋と元の時代に重なり、東アジア的な広がりの中で仏画を捉えます。

※重要文化財《弥勒下生変相図 李晟筆》京都・妙満寺【前期展示】が修理後初公開されます。

 

第6章    仏画の周縁-道教・マニ教とのあわい

道教やマニ教が仏画の表現を借りて表現され、中国の多様な表現が日本に残る仏画に見る事ができます。

 

第7章    日本美術と宋元仏画

中国で制作された絵画は日本では貴重な手本となり拠りどころとなってきました。中世、近世絵画の巨匠たちにどのように受け継がれているかを見ていきます。

 

東山御物も含む宋元仏画、約150件は、所蔵先においても仏像以上に仏画の特別展示(拝観)は限られており、これだけの件数の仏画が一堂に会し目にする機会はそうそうないでしょう。その多くが残る京都の地での開催が楽しみです。

 

【開催概要】特別展「宋元仏画―蒼海を越えたほとけたち」

  • 会期      2025年9月20日(土)~2025年11月16日(日)
  • 前期:9月20日(土)~10月19日(日) 後期:10月21日(火)~11月16日(日)

※会期中、一部の作品は上記以外にも展示替を行います

  • 会場:京都国立博物館 平成知新館
  • 開館時間:午前9時~午後5時30分、金曜日は午後8時まで開館 ※入館は各閉館30分前まで
  • 休館日:月曜日

※ただし、10月13日(月・祝)、11月3日(月・祝)は開館、それぞれ翌火曜日10月14日(火)、11月4日(火)は休館

  • 観覧料:未定 (公開になり次第追記予定)
  • 展覧会公式サイト:https://sougenbutsuga.com/
  • 展覧会公式SNS:X(旧Twitter):@sougenbutsuga、Instagram:@sougenbutsuga   
  • 一般の問い合わせ:075-525-2473(テレホンサービス)



プロフィール

morinousagisan
阪神間在住。京都奈良辺りまで平日に出かけています。美術はまるで素人ですが、美術館へ出かけるのが大好きです。出かけた展覧会を出来るだけレポートしたいと思っております。
通報する

この記事やコメントに問題点がありましたら、お知らせください。

こちらの機能は、会員登録(無料)後にご利用いただけます。

会員登録はこちらから
SIGN UP
ログインはこちらから
SIGN IN

※あなたの美術館鑑賞をアートアジェンダがサポートいたします。
詳しくはこちら

CLOSE

こちらの機能は、会員登録(無料)後にご利用いただけます。

会員登録はこちらから
SIGN UP
ログインはこちらから
SIGN IN

ログインせずに「いいね(THANKS!)」する場合は こちら

CLOSE
CLOSE
いいね!をクリックしたユーザー 一覧
CLOSE