秋の遠足 多武峰の談山神社へ
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- by morinousagisan
十三重塔が見たいと思っていました。「多武峰」という響きが大層遠い気がしてなかなか出かけられずにいましたが、展覧会も落ち着き、吉野の次は多武峰へ遠足に行こうと思いました。調べてみると談山神社は、奈良でも特に紅葉の名所として名高く、近鉄電車の広報誌にもトップに掲載されていました。吉野より近く、近鉄大阪線急行に乗車すれば近鉄桜井まで43分乗り換えなしでした。駅前からバスに乗って談山神社まで30分くらいです。途中に奈良博で拝顔した大きく逞しい「国宝 十一面観音菩薩立像」の聖林寺やBSNHKでよく視ていた「融通念仏宗 音羽山 観音寺」の近くを通ります。音羽山 観音寺は、バス道からはかなり上がっていったところの様です。談山神社のアクセスマップを見て位置関係を確認すると明日香村の裏手とでも言いましょうか。この位置関係がこの神社の縁起にも由来します。
談山神社に伝わる鎌足の生涯を描いた『多武峰縁起絵巻』によれば、皇極4年(645)の藤の花の頃(※「藤」というのも味噌ですね)に中臣鎌足と中大兄皇子がこの地 多武峰の山中で当時朝廷で実権を握っていた蘇我入鹿暗殺のクーデター、所謂「乙巳の変」の謀議を諮ったことから、この山が「談い(かたらい)山」と呼ばれるようになり、談山神社の名の由来となりました。室町時代に制作された『多武峰縁起絵巻』がちょうど権殿で展示されていました。絵巻の「乙巳の変」の場面では蘇我入鹿の首が飛んでいて、大江山酒呑童子のお話を思い出しました。この絵巻に天皇らしき人が女性として描かれ、そうです皇極天皇は女帝で、重祚して斉明天皇となりますが、政治の実権は中大兄皇子が牛耳ることになります。天智天皇8年(669)に中臣鎌足が重病となり、天智天皇(中大兄皇子)は中臣鎌足を見舞って「藤原」の姓を賜りました。藤原氏の始まりです。中大兄皇子と中臣鎌足の出会いは、飛鳥・法興寺で行われた蹴鞠会と伝わり、談山神社でも蹴鞠の行事が行われています。
11月の中頃過ぎに出かけましたが、今年は紅葉が遅くて、この辺りはまだ紅葉していませんでした。
朱塗舞台造拝殿は、室町時代 永正17 年(1520)の造営で、中央の天井は伽羅香木でつくられています。
折れ曲る東西透廊に吊り下げられた灯籠が美しかったです。
鎌足は、摂津国 阿威山(現在の大阪府高槻市)に葬られましたが、白鳳7年(678)唐より帰国した藤原鎌足長子・定慧が鎌足の遺骨の一部を多武峯山頂に改葬し、十三重塔と講堂を建立して妙楽寺と称しました。つまりここはお寺だったのです。神仏習合でしたが、明治期に神仏分離令により談山神社となりました。
※権堂の「秋の社宝特別公開『藤原鎌足公展』」では、鎌足公がはじめに埋葬されたかもしれない阿武山古墳出土の『玉枕』と『大織冠』の複製も展示されていました。
十三重塔は、白鳳7年(678)に鎌足の長子・定慧が父の供養のために創建した塔婆です。現存のものは享禄5年 (1532)に再建されたもので、現存する世界で唯一の木造の十三重塔です。
権堂にあった鎌足の図像には、左に次男・藤原不比等(光明皇后の父)、右に長男・定慧、前に鎌を咥えた狐が描かれていました。※不比等には天智天皇の落胤説あり。
龍ヶ谷の古代「岩くら」と「龍神社」で、古神道の信仰の姿を今に 残した、霊地だそうです。ちょろちょろと流れているのは、大和川の源流の一つであり、神聖な神の水が、神山より千古の時代を経て、湧き続けています。岩上のお社は、飛鳥時代に大陸から龍神信仰が入ってきて、日本の水神(たかおかみの神)と習合して、龍神社と呼ばれるようになりました。写真におさめるのも憚られるような霊気も漂うっている様な。
総社拝殿は、江戸時代の寛文8年(1668)に造営されたものです。正面・背面ともに唐破風をもつ建物です。
紅葉の期間は全山ライトアップされています。
紅葉には少し早く観光客も比較的少ない時期でした。お昼は、神社前にある唯一の多武峰観光ホテルか神社正面入口入ってすぐにお食事処があります。
談山神社を堪能して、桜井駅まで戻り、JRでお隣の駅「三輪駅」へ。万葉まほろば線で3分です。
背後の三輪山をご神体とする、日本最古の神社とされる 大和国一之宮 大神神社にもおまいりしてきました。来年は巳年ということで、境内の巨大な「巳の神杉」にも掌を合わせてきました。近くの展望台から奈良盆地と大鳥居も見てきました。
帰路は、万葉まほろば線で奈良まで出て帰ってきました。線路のすぐそばに「纒向遺跡(まきむくいせき)」が見えました。
秋の遠足 奈良PART2でした。この秋はくしくも「大化の改新」と「建武の新政」、日本歴史上の政変に関連ある地を訪れることになりました。談山神社は、紅葉の頃も良いですが、青紅葉の清々しい季節も気持ちいいだろうなぁと思いました。
談山神社:https://www.tanzan.or.jp/index.html