今年も始まりました「正倉院展」 今年はちょっと地味目ですが・・・
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- by morinousagisan
関西人にとって秋の恒例行事となっている「正倉院展」へ行ってきました。
コロナ禍となって以来、全予約制なので、日美の放送される前に・・・などとは思わなくていいのに、ツイツイ早めに出かけてしまいました。
内覧会に参加してのブログなら「正倉院とは」や「正倉院展は」などの説明から入るところですが、個人的に出かけましたので、それらの基本的情報については、奈良博HPや公式サイト等でご確認ください。
予約時間前にはかなりの人の列が出来ますが、展示は一方通行ですので、予約時間始めの第一展示室の最初の所は混みますが、20分~30分もすればスイスイ見ることができます。つまり、最初から予約時間の20分~30分後に入場すれば混まず、また待ち時間もなくゆっくり鑑賞できます。
展示も、コロナ禍を考えて今年もスペースを取った展示となっています。
今年の正倉院展は、見栄えとしては、ちょっと地味かもしれません。
話題になっている香木「全浅香」にしても、香ってくる訳でなく太い丸太がゴロンと展示されている感じで、ここは信長が、あそこは頼朝が切り取ったところと見どころがある「蘭奢待」のようではありません。
聖武天皇と光明皇后の娘・称徳天皇が東大寺に献納したと伝わる(日付が記載されている)「銀壺」、表面に騎馬の狩猟文様や蝶々など鋭い線刻と余白は鏨で魚々子文が埋め尽くされた大きな鈍く銀色に光る壺です。もちろん、すぐそばには壺表面の模様の拡大写真パネルも展示されていますが、裸眼では何が描かれているのかはなかなか分かりにくいかもしれません。
当時の腰ひもに垂らしたり、衣服に縫い付けたりしたアクセサリーなどの展示も今年の見どころかもしれません。
ところが、この展示品が本当に小さい!単眼鏡必携です!
「彩絵水鳥形」(さいえのみずどりがた)単眼鏡を使っても、つい近づいて肩に力が入って見入ってしましました。拡大写真パネルと本物を何度も見比べ確認してしまいます。
当時これを作った工人たちは、目がものすごくよく見えて、技術も優れている工人たちがいたということが考えられそうです。平均寿命も長くない当時においては、彼らは若くして高い技術を身につけていたのではないでしょうか。
今年の注目は「染織品」の展示だと思いました。
特に儚い、もろい「染織品」の保存の難しさをも伝えられています。
染織品の保存には、その「塵」までも細かく分類して大切に保管しているそうです。先々何かで役立つときもあるかもしれない。正倉院に関わる細やかな仕事です。(ホコリアレルギーとか、絶対くしゃみは出来ない)
「染織」なので、もちろん、色彩の美しさや組み合わせの妙といいますか、気品があって当時の人のセンスの良さも伝わります。
明治維新を前にした天保4年(1833)の正倉院宝庫御開封に際して古裂の断片を貼り交ぜた屛風「東大寺屛風」を作成しましたが、
昭和30年代に屏風の虫喰いで傷んだために、屏風に貼られていた「裂」を剥がして1枚ずつ平らにして保存することとなりました。
「錦繡綾絁等雑張」(にしきしゅうあやあしぎぬなどざっちょう)、ちょっと裂帖の様な感じもありますが、「古裂」の「古裂」とてつもなく古い「裂」の断片で、愛おしささえわいてきます。
古文書も例年の如くに、戸籍だったり、役人の給与だったり、光明皇后発願の写経だったりが展示されていました。
正倉院や今年の出陳については、youtubeの
「<正倉院展講座>第74回正倉院展 今年の見どころ 杉本一樹・宮内庁正倉院事務所元所長」
の視聴をお薦めします。⇒ちゃんとテーマがあっての展示順と展示となっていることを教わりました。
地味だけど深い今年の「正倉院展」でした。
CFで修復を終えたお庭の茶室や仏像館も駆け足で拝見して
外に出れば、なーんと春日の山に大きな虹がかかり、何だか奈良の地で見上げる虹は神々しかったです。
せっかく、遥々奈良まで来たんだからと、テレビでもやっていたし造替なった若宮さんへ行こうかとも思いましたが、駅から遠く正倉院展の前に疲れてしまうかもと思いついたのが一度伺ったことがある「依水園」と「寧楽美術館」です。ナント!月曜日は開館されている。で、伺ってきました。
寧楽美術館の展示は、「雑記から茶陶へ―焼き締め陶とその源流―」土器片から始まる展示で、青磁碗あたりかだんだんテンションが上がってきました。ここ最近大阪東洋陶磁美術館が改修のために長期休館に入り、コロナ禍の前から出かけけられてなくて、ぶらっと出かけて心行くまで眺めていられる時間を過ごしていなかったこともあってか、こちらの展示で友人から「いいよ」と聞いてはいた『粉青沙器』に目覚めてしまったような。受付で写真撮影OKと仰って頂き写真も撮らせて頂きましたが、ブログでの公開の了解はとっていませんので作品の掲載はいたしません。(こちらの美術館も正倉院展のついでに寄るだけでブログを書くつもりで出かけていませんでしたので)
『粉青沙器印花菊花文鉢』いわゆる「三島茶碗」です。くっきりとした三島の模様がとってもよくて前のめりになってしまいました。『粉青沙器刷毛目壺』もコロンとした芋頭の水指も良かったなぁ。金継が心憎い『粉青沙器刷毛目皿』章のテーマは「茶の湯による見立てとゆがんだものへの愛情」なるほどなるほど確かになぁ。
京博の国宝・重文数珠つなぎの「どやぁ!」な感じの展覧会は国立の博物館だからこその力業的な展覧会です。学芸員さんのセンスも光る楚々とした展示も素敵だと思った次第です。
展示を観終わってお庭「依水園」の門をくぐって驚きました。たまたまだーれも居ない広々としたお庭に初秋の景色が広がり、水車の回る音と水の流れる音しか聴こえない。春日山と向こうに見える屋根は東大寺かも。広いお庭に茶室が点在します。へぇ~。これからの時期は分かりませんが、超穴場で、とっても癒されました。
【information】
・名勝 依水園・寧楽美術館HP:https://isuien.or.jp/museum.html
日が暮れるのも早くなり、猛ダッシュで帰路へ。