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特別展 呉春―画を究め、芸に遊ぶ―

特別展 呉春―画を究め、芸に遊ぶ―

大和文華館|奈良県

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もう一つの「果蔬図巻」のよう呉春筆「蔬菜図巻」

呉春(1757-1811)は、大阪・池田にある逸翁美術館でよく観てきました。呉春(松村月溪)は、裕福な家に生まれその家業を継ぎました。家業の傍ら、旦那芸の1つとして始めた俳諧や文人画でしたが、その頃すでに名を成していた蕪村(1716-1783)に弟子入りをして本格的に学び、やがて家業から身を引いて俳諧師や絵師として生きていくようになったようです。そんな時、妻と父が相次いで亡くなり、落ち込んでいる呉春を見かねたのでしょう蕪村の勧めもあって、京都を離れ、蕪村のつてを頼って現在の大阪府池田市へ転居します。その地「呉羽の里」で呉春は次第に癒され春を迎えて「呉春」と名のるようになります。この心温まるお話大好きです。「呉春」は池田の最後の酒蔵の銘酒の名にもなっています。
本展は、呉春の初期から晩年まで5章構成です。呉春の画風の変遷を辿ります。
京の旦那衆の余技だった南画や俳画からはじまり、蕪村の文人画、俳画を学びとり、やがて京に戻って応挙(1733-1795)を訪ね門下に入ろうとしましたが、応挙は友人として迎え入れたようです。
応挙は兵庫県・大乗寺障壁画の制作を依頼され、応挙の門下と共に制作にあたり、応挙の代表作の1つです。応挙は、呉春の才能を認め、重要な襖絵を担当させました。本展にも展示されています。洒脱な文人画を描き、俳諧の教養もあわさり、応挙の写実性をも学び、呉春の画風へと昇華していきました。
逸翁美術館で早春に展示される 重要文化財《白梅図屏風》は必見です。藍色に染めた布に描かれた白梅は、夜の白梅がふわっと香って来そうな作品です。若い梅と古木を描いていますが、光琳の梅とはまた違った趣があります。その辺りに呉春らしさが表れているのではないでしょうか。
蕪村辞世の句「しら梅に明る夜ばかりとなりにけり」

京都へ戻ってからは、かなり著名な絵師となったようで、交友関係も広まり、呉春に描いてほしいとの注文も多かったようです。妙法院門跡蔵《真仁法親王像》は意外でした。こんなにパキッとした肖像も描くのかと。宮内庁京都事務所蔵《浜辺松残雪図小襖》《海辺遠景小襖》は、応挙の影響もありながら呉春ならではの作品で、なかなか目にすることがなかった作品ではないでしょうか。四条派の祖となり、円山四条派として京都画壇へと繋がっていきます。
晩年の作品、泉屋博古館蔵《蔬菜図巻》は、福田美術館でお目にかかった世界初公開の若冲筆《果蔬図巻》と似てハッとなり、もう一つの「果蔬図巻」では?と思ったのでした。この時代には、蔬菜、果蔬の図巻が流行っていたようです。呉春筆《蔬菜図巻》1巻丸ごと見てみたいものです。
京都国立博物館蔵《芋畑図襖》近くは濃く、後方は薄く描いて遠近感が表現されています。まるで等伯の松林図の様に。そしてとても柔らかな筆遣い、墨遣い。晩年は多くの門下生を持ち、かなり頑固なジイサンになったとの噂もあったようですが、それは当然な事、誰にも何にも捉われなくなるとそうなっていったのでしょう。呉羽の里で癒されて春を迎えて「呉春」と名のるようになった事も忘れ去ってしまったのでしょう。
この時代、文人画、俳諧、人気絵師としても広い教養が必要でしたし、それを理解し、交友関係をもった人たちもそれなりの教養があったということです。
呉春はかなりのグルメであったことも本展で知り興味深い展示でした。
その辿った経験を糧にした洒脱にして柔軟性のある絵師でした。

京博さん、池大雅展も開催されたことですし、蕪村から呉春、円山四条派から京都画壇への流れのような大々的な展覧会が観たい。

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