塩田千春 つながる私(アイ)
大阪中之島美術館|大阪府
開催期間: ~
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「不在の中の存在」塩田千春の作品に浸る
今年度一番観たかった展覧会でした。5階展示室へエスカレーターで上っていくと、右手に展覧会の大きなバナー、そうして目の前に現われたのは天井から無数の赤い糸が垂れさがり・・・心が震えるというか、ゾワゾワするというか。「あぁ~これが塩田千春のインスタレーションなのか!」と。
映像作品と現在新聞連載中の多和田葉子『研修生(プラクティカンティン)』のための挿絵以外は撮影可です。
・「つながる私(アイ)」つまり「I」であり「愛」であり、「EYE」
塩田さんは、生まれ育った大阪では、コロナ禍のパンデミックを経て気づかされた「つながり」をテーマにしたいと思われたそうです。
・展示作品は、インスタレーション6点、タブロー3点、立体作品1点、ドローイング19点、挿絵(新聞連載中)会期末までに361点展示予定です。
・大阪府岸和田市のご出身で、2008年夏お隣の国立国際美術館での「塩田千春 精神の呼吸」以来約16年ぶりの大阪での大規模個展です。この度、大阪中之島美術館と国立国際美術館を繋ぐ橋も通れるようになりました!(橋でも繋がりました)16年前一般から提供された2000足以上の靴を赤い糸で結んだ《大陸を越えて》、あぁ覚えているが、私はその展覧会を観ていない。(国際美はいつも1歩先に行っている!躊躇することなく機会があるならその時行っておくべき)当時お嬢さんが誕生されたばかりで、お子さんの成長にその年月を重ねておられるようでした。
・巡回はありません。
・展示作業は”X”や”Instagram”でも発信されていました。8月26日から9月10日までの16日間でした。世界各地で展示を抱えていらっしゃる塩田さん、イスタンブールや中国での展示も2つ同時進行中です。自分を表現する場である展示は大好きと話されています。大阪中之島美術館の菅谷館長は、一人の世界的規模の作家さんと一緒になって作りあげた展覧会はいい形になったと話されていました。
会場へ入る前に私たちの前に現われた天井から吊るされた深紅のドレスとそれを覆いつくす赤いロープのインスタレーション《インターナルライン》。
ナチスの収容所で生き残ったユダヤ人が故郷ポーランドへ帰ってみると住んだ家も家族も誰も居なくなって、また一片のパンをくれたオーストリアへ戻っていくという「アイ」の中の「愛」(LOVE)をテーマに作られた作品です。
いよいよ会場内へ。赤い世界とは一転した天井から側面に白い糸を巡らし、水をはったプールに無数の白い糸が写り込み、水の雫がぽたりぽたり落ちて波紋が広がる《巡る記憶》
本展で一番展示作業が大変だった作品です。(5階の展示室に水をはって、そうだろうなぁ。)白い糸は、神経細胞ニューロンがシナプスで繋がり天井も側面へも増幅しているよう、プールに落ちる水滴は蒸発して水蒸気となりまた水滴となって・・・と生命の記憶と循環を表現しています。
1992年に制作されたタブローは、絵を描くことに行き詰まりを感じていた塩田さんが、糸の作品へ転換するターニングポイントとなった作品です。資料映像『塩田千春 クロノロジー』では、そのタイトル通り塩田さんのこれまでが紹介されています。展覧会前に近くの図書館に唯一あった功刀知子著『美術家たちの学生時代』を映像で再読しました。お父様の死や流産と辛い時期から抜け出すきっかけとなった2015年のベネチアビエンナーレへの参加は大きな救いとなったようです。私たちも現代美術家塩田千春を大きく認識する起点となったのではないでしょうか。
帰る場所としての”Home”を赤い糸で表した家型の《家から家》
故郷へ戻ってみると何がそんなに懐かしかったのか。何故あんなにも帰りたかったのかと。いくつになっても「帰りたい」と思ってしまいます、何処へ帰るのか。もう帰りたいはずの家は今はないと実感している今の私に迫る塩田さんから零れることば。「現実には離れていても自分と繋がっている、帰る事ができる場所」それは心の内にあるのかもしれません。
天井から吊るされた白いドレスがクルクルと舞う。ドレスは、第二の皮膚でヒトのからっぽの身体を表しています。白いドレスの合間に様々な赤い形状もクルクル回る、回る。《多様な現実》
「私にとっての現実はこの私にしかわからない。(中略)内的宇宙と外的宇宙をつなぐことで初めて私の存在意義が見えてくるような気がする」とキャプション横の解説にあります。
本展覧会に寄せられたメッセージによる、インスタレーション作品《つながる輪》
「つながり」をテーマとして広く一般から寄せられたメッセージは、1500通を超えた。1通1通のメッセージは書いた人のそれぞれの人生。コロナ禍で、展覧会が10以上もキャンセルとなり、人との直の繋がりを避けて過ごす日々に、多くの人と繋がっていたことを感じ、改めて「つながり」を考える機会となったそうです。それは全世界的にそうだったのではないでしょうか。「赤い糸で繋がっている」のとおりによせられたメッセージを赤い糸でつなげたインスタレーションは、コロナ禍を経験したからこそ生まれた作品です。
現在新聞に連載中の多和田葉子の『研修生(プラクティカンティン)』に挿絵を描きながら、ことばを絵にしていく難しさを感じられているそうです。
展示会場を出てショップの先にお住まいになっているベルリンでの様子を紹介した映像も上映中です。東西の分断の象徴であったベルリンは、ウクライナから逃れた人たちの乗るポーランドからの列車が着く地でもあり、世界の情勢が目の前に展開される街。海外に身を置いて日本人としてのアイデンティティも考えられる街であり、24時間アーティストでいられる街。制作のヒントはベルリンという街にもありそうです。
「存在の不在」「不在の存在」自分であることを追究し、観る側である私たちに様々なことを問いかけてきました。本の中にあった通り「作ることは生きること」「アーティストはアーティストになるために生まれてきた」なのでしょう。「人前で話すのは苦手で緊張しています」とお話しされ、その緊張がこちらにも伝わってくるのですが、作品たちは雄弁に語ってきました。
作品のスケールが大きいということではなく、作品の持つ力が大きく、そこに込められたものが迫る展覧会です。
☆塩田千春の作品からセレクトした53作品が 「CHIHARU SHIOTA」キューブ公開中!
以下も参考にしました。
・2008年「塩田千春 精神の呼吸」@国立国際美術館
・2019年「塩田千春展:魂がふるえる」@森美術館
・2021年「水の記憶」@十和田市現代美術館 コレクション インタビュー記事がとてもよかった。
・CHIHARU SHIOTA HP
【開催概要】
・展覧会名:塩田千春 つながる私(アイ)
・会期 :開催中~12月1日(日)
・休館日 :月曜日、10月15日(火)、11月5日(火)(10月14日(月・祝)、11月4日(月・休)は開館)
・会場 :大阪中之島美術館 5階展示室
・観覧料 :当日 一般2,000円(平日:1,800円)、高大生1,500円、中学生以下無料
・問い合わせ先:06-4301-7285(大阪市総合コールセンター)
※中学生以下は無料です!ぜひぜひインスタレーションを体感してほしい!
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- BY morinousagisan