特別展「本阿弥光悦の大宇宙」
東京国立博物館|東京都
開催期間: ~
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好きこそものの上手なれ。
光悦好き♡・・・と言いながら、今回腰引けてたんですよね。
書や刀って、わかるかなぁって・・・。
光悦作品は少ないだろうにどうやって膨らませるんだろう?と考えた時に、書や刀がぶわ~だったらどうしよ・・・って思いました。
で、私は今回光悦作品をひたすら見よう、と決めて行きました。
企画展がわからなくても、作品は穴があくほど見てくるぞ!と。
結果、解説全部後回しにしたんです。
それが功を奏しました。
代表作中の代表作「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」の超ロングケースを何周したか
覚えていません。
ライティングが素晴らしく、自分が動くと下絵がキラキラするので、ずっとゆらゆら揺れながら何周も・・・(笑)
印刷物で見るより百倍美しい。
鶴の尾っぽが金なのは印刷でもわかりますが、あのふわっとした感じは直に見ないとわからない。
ロングケースだから、端から反対の端の方を眺めてみると、下絵の動きに光悦の文字がリズミカルに呼応しているのもよくわかりました。
さらに、印刷で見るよりもずっと軽やかな印象を受けました。
先日大倉集古館で光悦風を意識した作品を目にして「おお!気持ちわかるわ~」と思ったんですけど、もっと流麗というか、格式高そうで品がいい感じだったんですよね。
自分も光悦作品を本で見たり、どこそこで1点だけ見たりして、「ふんふん、なるほど~」とか思うとこあったんですけど、今まで自分が思っていたよりずっと素朴な美しさだと気づきました。
下絵も字もさらさら&すーっと書いてて(描いてて)、どちらも筆がすごく軽い。
もっと言うと楽しそうなんです。
ずっと眺めてて「あ~、鶴好きなんだなぁ」と感じたんですよね。
「鶴いいなぁ、好きだなぁ、銀で描いたら・・・ああ、きれい。金入れてみよ・・・超最高じゃん!」みたいな、描く楽しさに溢れてる。
第3章で法華題目抄を見てて「あれ?」と思ってそこは解説読んだんですけど、「行書草書を織り交ぜて」と書いてあって、それは女人成仏を説いた本だった。
つまり女の人も読むだろう、その方がよりわかりやすいだろう、との考えからだと思うんですよね。自分でさえ他の書より読みやすくて読めた。
光悦の書って感覚的にだけでなく、実はちゃんと伝えようとする字なんじゃないかと思うんですよ。デザイン的ばっかり言われるけど違う気がする。
だとしたら、この鶴下絵の文字の根底にあるのは「目が楽しいでしょ?単調だと読んでてつまないもんね。これのが楽しいよねぇ!書って楽しくないとねぇ!」だと思ったんです。
そういう心からの楽しさに満ちている巻絵。とにかく感動しました。
そして、この「楽しいよねぇ!」が茶碗コーナーではもっと炸裂してて、本当にすごいです・・・。
どれも「いいなぁ、手で持ってみたいなぁ、自分も作ってみたいなぁ」と思いました。
ちょっと自分でもびっくりでしたよ。
だって茶碗ってそれなり美術館を回ってると置いてあるから見ますよね。
素人ですけどとりあえずは「ふーん」と数は見てる。
なのにそこのコーナー全部いい、って、ないですよ、そんなことって。
でも全部いいんですよ。途中で気づいて「嘘だ・・・」と青くなり、後に興奮で赤くなりました。
もう「作るの楽しかったんだろうな~!」しか感じないんですよ。
これが「いいもの」なのかなぁって。
いや~、たまげました。
そして最後に。
一番感動したのは端に地味にあった書です。
あれ?また字が変わったなぁ?と思って解説を見たら、
「50歳半ばで手の震えがひどくなり・・・」とあって、どうやら脳梗塞か何かだったんじゃないかということみたいなんですが・・・
これ読んで「・・・えっ?!」となりました。
いや・・・辛そうに見えないんですよ、字が。普通に明るい字なんですよ。
手紙なんですけど、ちゃんとわかるように書いてあるし、全然そんな雰囲気がない。
これは、光悦の人生が凝縮してると思いました。
光悦の書ってやっぱり仏教が大きく関わってると思うんですけど「仏に捧げるものだから雑でなく美しいものにする、わかるように書く」が写本の基本ですよね。
宗教って、死を意識することなのでどんどん生が重くなってくるけど、あるところで死も生も軽くなる。開けてくる。
老・病・死は避けられないけど、生からも、自分からも逃げられない。
だったらできる限り今を幸せに生きようじゃないか、と。
光悦の書に辛さがないのは、震えにいらいらしたり、うんざりしながらも、状況を否定せずに書ける限りで書いてるからだと思うんです。
つまり「書くこと」に誠実だったんだと。
そしてそれは作陶でも漆でも同じで、根底にあるのは生を謳歌する誠実さだったんじゃないかと思いました。
もう、本当に勇気もらいましたね。
天才がこんなに精一杯人生を楽しんでいたのなら、凡人の自分はそれ以上の熱量で、これからもせっせと美術館や博物館へ行こう、楽しもう!と思いました。
「行くのどうしようかな~」って方がいたら、是非行ってほしい!
もう早速今年のベストかもしれません。
当然後期も行きます!
鑑賞の機会を下さったアートアジェンダ公式様に大感謝です。
ありがとうございました。
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