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サラ・モリス

サラ・モリス

大阪中之島美術館|大阪府

開催期間:

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サラ・モリスの日本初となる大規模個展です。(長いレポートです)

1月31日から大阪中之島美術館で始まった「サラ・モリス 取引権限」は、ニューヨーク在住のサラ・モリス(1967~)の初期から今日までの代表的作品を展示する大規模回顧展です。
サラ・モリスという現代作家の名は聞いたことはありましたが、作品は見たことがなくとても楽しみにしていました。2022年2月2日に開館した大阪中之島美術館の「大阪中之島美術館 開館プレイベント2019 『新収蔵品:サラ・モリス《サクラ》』」が2019年秋に開催されていました。気にかかっていたのに結局その時は見逃してしまっていたのでした。なので「サラ・モリス」というアーティストの名前は記憶にあったのですが、彼女の作品については全く予備知識がないままに本展覧会に出かけていきました。展覧会サイトや展覧会のチラシにある「図式的なグリッドを用いた幾何学的な抽象絵画」と読んでも全く想像すらできないのですが、チラシやメインヴィジュアルはエネルギッシュで、知らなかったアーティストの作品との出会いにワクワクしました。

大阪中之島美術館は、モリスの作品を日本で初めて収蔵した美術館です。アートアジェンダの本展紹介に掲載されている2作品も収蔵作品です。本展「サラ・モリス 取引権限」は、モリスの初期から最新作品まで、代表的な絵画41点、絵画制作と並行して取り組んできた映像作品も最新作《クリス・ロック》個人蔵を含めて17点が会場にて上映されています。これらに加えてドローイングやポスター、資料も展示され、制作過程も知ることができとても興味深く、サラ・モリスの現時点までを知る展覧会となっています。出展作品の約90%が日本初公開です。映像作品の動画撮影以外は、全作品撮影可です。ということなら、アートブログで画像と共に紹介もできたのですが、私のへぼい画像ではなく是非とも現場で生の作品を体感してほしいと思いました。映像作品は上映時間が決まっていますのでご注意ください。
※展覧会のHPに【上映リスト】が掲載されていますので、ご参照ください。

展示会場にはよくある作家の経歴年表のようなものがなく、サラ・モリス自身についてイマイチ掴めず、そのバックグランドも知りたいと思いました。1967年イギリスに生まれ、アメリカで育ち、現在ニューヨーク在住。幼い頃より絵を描くのは好きだったが、美術を専門に勉強した訳ではなく、アメリカの名門大学ブラウン大学の記号学部に学んでいます。図録掲載のモリスとジョン・ケルシーとの対談で「私はブラウン大学で[美術ではなく]記号論と政治哲学のプログラムを受講したのです。」とありました。そして建築にも興味があったそうです。「記号論」というのがそもそも私にはよく分からないのですが、ケンブリッジ大学ジーザス・カレッジを経て、『バルーン・ドッグ』で有名なジェフ・クーンズや美術批評家ハル・フォスターの知己を得て、ホイットニー美術館インデペンデント・スタディ・プログラムに参加し、その間にジェフ・クーンズのアシスタントもつとめています。彼女に決定的な影響を与えたのは1989年ニューヨークに拠点を移したことであると図録に解説されています。80年代終わりから90年代にかけてモリスの作品制作の基礎となるヒントがありそうに思いました。

以下主な展示作品は、本展覧会サイトの「出品作品」に解説されています。
作品のイメージを把握していただくためにも、展覧会サイトの画像もご確認ください。

1.「サイン・ペインティング」シリーズ
注意喚起の看板のタイポグラフィを引用して再解釈した最初期のシリーズです。
2.「ミッドタウン」シリーズ
ニューヨーク、マンハッタンの中心部の高層ビル群をテーマとしました。その後の都市名を持つ絵画シリーズへと続いていきます。あぁ、これが「図式的なグリッドを用いた幾何学的な抽象絵画」と説明されていたものなのかと思いました。幾何学的ではあるのですが、夜に下から見上げた高層ビルそのもののように見えました。
3.「サウンドグラフ」シリーズ
映像作品《有限のゲームと無限のゲーム》の撮影時にモリスが録音した音声をもとに、モリス自身の声を絵画に転換しました。
4. 「スパイダーウェブ」シリーズ
コロナ禍のステイ・ホーム中に蜘蛛の巣という小さな身近な自然に目を向けて生まれたシリーズで、まさにネットワークです。

絵画制作と並行して映像作品も制作しています。映像制作に向けてのリサーチ資料も展示されています。サラ・モリス自身によるインタビュー映像作品もあり、インタビュアーとして投げかける彼女の問いかけは彼女の関心のありどころであり、目まぐるしく次々と流れていく都市の情景は、彼女の関心の先を紡ぎながら、それぞれの対象物(者)を浮き彫りにしていきます。都市の絵画シリーズは、映像制作を通してモリスの中で整理されて「図式的なグリッドを用いた幾何学的な抽象絵画」、平面の表現となったように思いました。

大阪との関わりでいうならば、2017年と2018年に大阪を訪れたモリスが制作した「大阪」シリーズや
大阪中之島美術館が所蔵する映像作品《サクラ》があげられます。東京でも京都でも奈良でもない大阪。モリスが幼い頃父のラボで働く科学者からお土産でもらったサクラクレパスが着想源の1つだったともいわれています。身近な街や桜の季節に私たちが見落としている、見過ごしていた、光景も映し出しています。
※上映リストによれば映像作品《サクラ》は、12:36から上映時間50:06 min 必見です!
住吉大社の松や「松ぼっくり」シリーズ、《ゆず[大阪]》、更には大阪、天王寺区に本社がある世界最古の建築会社を作品にした《金剛組》も興味深く作品の前に立ちました。

展示室の1壁面全体に本展のために制作された新作壁画《スノーデン》は、18.85m×5.9mという大きさです。本展内覧会の直前まで制作されていた「サイトスペシフィック」な作品、つまり設置場所の建築や空間に直接的に呼応する作品です。この壁画の立面図、テクニカル図面、制作スケジュールなどの資料も展示され、モリスの厳密にして緻密な制作過程が伝わってきます。都市や森や建物のイメージや画面に描かれた雪に由来するものと考えられますが、私も映画を観たことがある「スノーデン事件」の「スノーデン」ともリンクすれば決して能天気に眺める壁画ではなさそうで、多様な解釈がありそうです。「サイトスペシフィック」な本作は、展覧会が終了すれば元の白い壁面に戻されるとのこと(そのまま保存してほしいですけれど)本展覧会会期中だけ観ることができる貴重な作品ですので、お見逃しなく!

本展には、新聞社やテレビ局などのメディアの協賛はなく、(トートバックがあったら買いたいと思っていたのですが)グッズ展開もありません。なんだか潔い!あるのは図録だけです。「モリスの日本語文献としても貴重な一冊です。」と紹介されています。

世界状況は刻々と変化していますし、アート界にもAIやChatGPTも内包し、図録掲載の対談でもモリスも語っています。今後サラ・モリスはどのように展開していくのかその制作も注目されるところです。
本展覧会のタイトル “Transactional Authority” 「取引権限」難解!「自己と他との関係性?」皆さんはどのように解釈し受け止められたでしょうか。

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