(備忘録)9/14国立民族学博物館「舟と人類―アジア・オセアニアの海の暮らし」展

9月14日(日):9月04日〜12月09日の間、国立民族学博物館で開催されている特別展「舟と人類―アジア・オセアニアの海の暮らし」に行ってきました。
撮影OK
講演会「舟の人類史-移動・漁・信仰」に参加
私は、以前フォールディング(組立式)カヌーを担いで、川や湖に行きパドルを漕いでいました。そのせいもあってか、今回の舟シリーズは楽しみでした。
本館の左隣にある特別館に入ると、上の写真パネルが出迎えてくれました。すごいですよね、外洋にカヌーで漕ぎ出せるなんて。この写真は、チェチェメニ号というカヌーで、1975年、ミクロネシアのサタワル島から沖縄海洋博会場まで、3000キロの大航海を達成した時のものだそうです。
想像してみてください。この先、陸地があるかもわからないのに、移住を目的に海に漕ぎ出すことはできますか?私には無理だぁ!何かしらの根拠はあったとは思うけど、それでも家族や家畜を連れて船団を作ってよく行けたものです。チェチェメニ号の実物が展示されていますが、こんな小さなカヌーでよく海を渡ったなあと怖くなりました。
大きなカヌーもいろいろありましたが、それは誰かのレポートにお任せして、小さい舟がいろいろと面白かったです。

小さな舟といえば、例えば、コレ。そう、タライです。タライの舟といえば、そうです佐渡島ですね。ちなみにこの写真、横に引き伸ばしてはいないですよ。珍しい2人乗りだそうです。テレビではたまにチャレンジ企画でアナウンサーさんが漕いで、海に落ちるまでがワンセットでしたね。たらい舟は江戸末期から明治時代にかけて活躍していたそうで素材の板はスギで箍(たが)は竹だそうです。

写真は、たらい舟と同じスペースの対面側にあった沖縄のタンク舟なのですが、形状が舟としては、ん?という感じがありました。解説を見ると、この舟の素材が米軍機が落としていくジュラルミン製補助燃料タンクだそうです。タンク舟のタンクはそれかぁ!
そういえば、BEGINの曲にも「オバー自慢の爆弾鍋」がありますが、そのタイトル通り、拾った爆弾を鍋代わりに使うバイタリティはすごいです、とはいえ、実物の爆弾鍋は見たことはなかったので、まあフィクションだよねとも思っていました。しかし、これを見てしまうと、爆弾鍋があっても何ら不思議ではないですよね。

舟を作る道具も展示されていました。基本形状は日本でいえば「手斧(ちょうな)」に近いもので、刃にあたる部分にいろいろ材料が使われていました。面白いものが、写真にあげたような「貝」を使った斧でした。確かに、固そうで肉厚な貝に見えますが、固さで木に勝てるのだろうか?そこまで考えてから、解説を読むと、ミクロネシアでは石材が限られていたそう。そうだ、サンゴ礁の島が多いと硬い石は確かに手に入らないよなあ。ここで、ミクロネシア、ポリネシアを展示にあったような舟で貿易することで石や鉄も手に入れたのでしょう。道具類は日本人基準で考えてはいけませんね。

舟といえば、漕ぐために使う櫂(かい)がありますよね。日本語では櫂で全部賄えますが、英語で言えば、使い方で「オール」と「パドル」に分かれます。簡単に言えば、オールは進行方向に向かって後ろを向いて使う公園のボート、パドルは進行方向を向いて使うカヌーがあります。今回の展示はカヌーがメインですから、展示はすべてパドルでした。
さて、いろいろ展示がある中なぜパドルを取り上げたかというと・・・ここから先は私の趣味全開な話になってしまいますので、ニュージーランドのラグビーに興味がなければ飛ばしてください。
--------------(趣味の話 始め)-----------------
先ほども書きましたが私はラグビーが好きで、特にニュージーランド代表オールブラックスの試合を見ることが大好きです。そんな中、2023年ラグビーワールドカップフランス大会において、試合前にオールブラックスが行うハカでリーダーを務めていたアーロンスミス選手が装飾されたパドルを持っていました。(Youtubeにてラグビーワールドカップ2023 ハカで検索すると出てきます)ハカを行うときにリーダーがあまり道具を持ったところを見たことがなかったので興味を持って調べてみました。
・あれはホエ(hoe)というマオリ族伝統の象徴である木のパドル
・ホエは、「旅・団結・前進」の象徴であり、仲間とともに力を合わせて進むことを示す
・アーロンスミスの掲げたホエは、戦いに臨むチームが一つのワカ(カヌー)に乗り、同じ方向に漕ぎ進む決意を象徴したもの
・描かれた模様は先祖とのつながりとスピリチュアルな力を表す
アーロンスミスもこの年からハカのリーダーを引き継いでいたので、その責任感と気合を入れるためにホエを出してきたのかなあと思いました、考えすぎかもしれませんが。
--------------(趣味の話 終わり)-----------------
この日は、ウィークエンド・サロンという企画で民博の小野教授から「舟の人類史-移動・漁・信仰」というテーマで講演を聞くことができました。会場は開演時間ごろには人であふれ立見が出るほどでした。約1万2千年前の氷河期ごろ、南太平洋のインドシナ-ボルネオ島-スマトラ島-ジャワ島が陸続きとなっていたスンダ大陸からニューギニア島-オーストラリア-タスマニア島が陸続きになっていたサフル大陸に移住するときには遠洋航海技術を手に入れていたという話を中心とした移住の話が主でした。
最後に、この特別展は、舟や道具類、掲示を見ることはもちろんですが、各所に置かれた動画は必見です。あれらは、一つ一つが文化人類学にとっての宝といえると思います。
なお、これは本当に個人的な感想ですが、2階に置かれているVR体験は陸にいながら船酔いできる貴重(危険)なスポットです。気を付けて楽しんでください。
