大和文華館で水の流れの役割を知る

11月30日 大和文華館で開催中の「水辺を描く」展に行ってきました
撮影OK
講演会「水辺に誘われて 絵画史に見る水流の表現」を聴講
ポストカード「呂洞賓図」「松梅佳処図」を購入
今回は文章化に苦労しました、、、
予定がすっぽり抜けていた11月30日、予約なしで聴講できる講演会はないかなと探していたところ、大和文華館で行われる予定があったので、奈良に向かいました。
近鉄・学園前駅に降り立ち徒歩10分弱、日本書紀にも書かれた菅原池の傍の丘に建てられた大和文華館に到着。建物の構造は、入口正面が展示室、右手がミュージアムショップ、左手が講堂となっています。
今展は水にかかわる作品が32点出陳されていました。ゆっくり鑑賞するには、このくらいの点数がちょうどいい。展示室は「ロ」の字型になっており、動線にも余裕があって非常に快適に観賞できました。
鑑賞した作品のうち、記憶にしっかり残ったものについて紹介します。

【松梅佳処図 】
松と梅と滝という、よく取り扱われる題材が描かれたものですが、梅の迫力と水の豪快な流れが私の記憶の中では段違いでした。この迫力は梅の木に使われた1本の線の強さが効いていると感じましたが、松葉の黒と梅花の白が強い遠近感を出していて、より立体的に見ることができました。

【呂洞賓図】(雪村筆:重要文化財)
非常に厨二病的カッコよさが際立つ絵で、呂洞賓が左手に持つ水瓶から漏れ出る液体が、水煙となり右上に集まり龍となる。足場となっているもう一頭の龍の周りは激しい水流で囲まれている様子でした。水墨で描く水煙が本物の煙に見える技術そして足場の龍を取り巻く波頭の荒々しさがまさに風雲急を告げていました。

【伊勢物語図屏風】
屏風の鑑賞の仕方を勉強しつつあったので、この作品の水の流れに注目することで奥行きの概念が認識できたことは非常に嬉しいことでした。あくまで私の鑑賞の仕方ですが、右隻の八橋は、第3,4扇が前面に第1,2扇が遠景そして第5,6扇がちょっと後ろに見えたので、 第4,5扇の間を斜め左から右にかけて鑑賞すると立体的に感じることができました。次に、左隻の布引は、川が真横に流れている第3~6扇が平面、滝のある第1,2扇が少し奥の方向に見えたので、第3,4扇の間を斜め右から左にかけて鑑賞すると想像通りの立体性が見えました。

さらに、八橋の第5、6扇を座敷に座って見るようにローアングルから眺めてみると、より遠近感を強く感じました。

【緑陰渓友図】
与謝蕪村の作品を又見る機会を得たのはとても 嬉しいことです。落款の字を見るとクセの少ないもので、以前鑑賞した奥の細道画巻のクセ強文字とは異なっていました。さて、奥の細道の字体がわざとなのか、こちらが堅苦しくしたのか?絵は遠景の山、近景の森のため、最も近景の住宅と人がより小さく見えます。また、中井履軒の賛文には「どちらが魚を多く釣れたか賭けようではないか。そして釣り終えたら一緒に一壺の酒を飲み干そう。」とあり、大自然の中に見られる日常がこの絵の主題だと理解しました。ちなみに、小さく小さく描かれた人物を見ると奥の細道画巻、闇夜漁舟図や花見句画賛 と同系統でしたのでやはり蕪村かと安心しました。

【夏山飛瀑図】
高い峰が連なる深山から溢れ出る滝が一筋。これもモチーフとしては馴染みのあるものですが、遠景の峰は横長の長方形を積み重ねて描かれたものでした。近くで見ると、ドットの粗い初代ファミコンのようでしたが、全景が見えるように後ろに下がるとあら不思議、雲海から顔を出す峰が現れました。横長の長方形・霞む印象から、以前大山崎山荘美術館で鑑賞した、 ポール・シニャックの「ヴェネツィア」とイメージが重なりました。洋の東西を問わず、この技法は一般的に伝わっているものなのでしょうかね?

【四季山水図屏風 春景】
円山応挙の六曲二双のうち、春の景色を描いたものです。
シンプルです!シンプルながら、春霞に浮かぶ舟、奥へと続く松並木がボーっと長い時間見ていられる安定感抜群な絵でした。
私が見た感じでは、第5、6扇が前面におかれ、第1扇に向けて奥へと続くように感じました。だからか、松並木は左端が最も濃く描かれ、右に行くほど徐々に薄くなっていくのは、水墨画の遠近に対応いているように見えました。
日本画における水の役割について、いろいろな観点から学ぶことができ、私にとっては、水は絵を理解するためのアイテムのようなものだと思いました。今後、日本画の風景画を鑑賞するときには、今展のことを思い出すことになるとおもいます。
