逸翁美術館で修理完了した 重要文化財「芦引絵」五巻全巻見てきました

12月20日 逸翁美術館で開催されている
修理完成記念特別公開 重要文化財「芦引絵」五巻 全巻展示
期間:2025年12月17日(水)~12月21日(日) に行ってきました。
撮影NG
記念もあってか、入場無料で、鑑賞講座「芦引絵の物語紹介と修理報告」 も聴講できました。
文化財修理に関してはとても興味があり、今回の報告はとても参考になりました。
基本は剥落止めと裏打ちとなりますけど、いろいろな発見があったようです。少し紹介しますと、
1)各パーツに分解したときには、広い和紙もあれば、細長い和紙もあり、いろいろな紙を組み合わせて作られていることがわかりました。そのため、つなぎ目で微妙に合わないところがあったり、ふすまの幅が極端に短くなったりしていました。
2)総裏には金銀の1cm角程度の箔を散らした料紙を使っていましたが、絵巻の朱(辰砂=硫化水銀)の硫黄と反応してしまい、東大寺の転害門に薄黒い硫化した銀が染み込んでしまっていました。そのため、今回の修理では総裏を交換したそうです。
3)料紙の継ぎ目を開いてみれば、のりしろになっていた部分にも絵があったそうです。つまりは、以前の修理の時に適当に重ね合わせて貼り付けてしまったようで、今回の修理でうまい事継ぎましたとのことでした。
4)後妻の謀議のシーンが他の絵と異なり、色と絵が鮮やかになっていた。どうやら、江戸時代に加筆されたため彩度が上がったらしいです。
5)今回の料紙はトレーシングペーパー並みに薄いものが使われていた。さらに、肌裏紙が微妙に暗い色のものを使っていたため、相談のうえ、肌裏紙を明るいものに変えたそうです。
文化財の修理は、昔のものをそのままでというイメージが強いですが、時代・歴史考証とかみ合えば、変更することも可能となることは今後も修理工程を見るうえで、とても参考になりました。
さて、修理に関してはこのあたりにして、芦引絵の内容に触れますが、
一言で言えば、「室町時代のBL本」いわゆる純愛系の衆道の話でした。この時代、衆道は隠れた風習ではなく、洗練された文化でもあったので、いろいろな作品が世に出ています。
さらに昔になりますが百人一首にも「天つ風 雲の通ひ路 吹きとぢよ をとめの姿しばしとどめむ 」(僧正遍照)は高貴な男性に見初められた少年の心情を表していますので、かなり文化として浸透していたのでしょう。
絵がきれいなおかげで物語も、すっと入ってきてきれいに完結まで導かれました。
仏教でいうところの執着が過ぎるところがありますが、愛の成就という救済を受けてハッピーエンド?で終わっていました。
出会いの場面は、源氏物語の光源氏と紫の上とのファーストコンタクトを彷彿とさせていましたし、僧と稚児の目が合ったところは、キュピーンと一目惚れの音が聞こえたようでした。全体に生々しい表現はなく、美しい純愛を見た気分でした。
そして、最後年老いて、二人とも入滅したのちの最終の絵は、荒れ気味になった僧房に五羽の鳥が柵に止まろうとしている様子を表していました。この五羽の鳥は、第1巻にも登場してきており、無常観がわいてくる思いでした。
5巻まとめて展示される機会が今後あるといいのですが、逸翁美術館名物のデジ絵巻にしたいとも伺いましたので、
5巻通して目を通すこともそのうちできるかもしれませんね。
