娘の反逆

「世界一不運なお針子の人生最悪な1日」を観に行った。
母親から受け継いだ店を経営難で畳もうとしているお針子のバーバラが麻薬の取引現場に遭遇する。売人を始末し大金を横取りする「完全犯罪」、「通報」、「見て見ぬふり」の3択マルチエンディングのお話。
(以下含ネタバレ)

てっきり「ホーム・アローン」みたいに、弱い存在が知恵を使ってピンチを切り抜け巨悪に立ち向かっていく話だと思っていたら、母殺し、父殺しの話だった。
町の大人たちはバーバラと顔見知りであるが、究極的にはバーバラを助けてくれない。バーバラとマフィアの息子ジョシュだけで父親のマフィアに立ち向かって行かなければならない。バーバラの武器は針と糸を活用することだけだ。3つ目の選択肢でジョシュの手によって完全に父殺しが達成されるが、それもバーバラの糸がお膳立てしたものである。バーバラがある目的のため、食堂で髪を振り乱しながら踊り狂うシーンはウィリアム・ホフマン・ハントの「シャロットの女」みたいだった。
3つそれぞれの結末の後で、最後にどの選択肢とも異なるオチがつけられている。このオチは確かにその場では血は流れずハッピーエンドだが、ジョシュは父親から逃れることができず、バーバラも「父」に庇護され、母親の店を存続させることができるため、そこに縛り付けられたままだ。てなると、父殺し、母殺しが成就した3つ目の選択肢が「TRUE END(理想的なエンディング)」ではないかと思う。
マルチエンディングの場合、作品の終わりに近いほど「真のエンディング」であるような気がする。最後のオチが「真のエンディング」であるとすると、父殺し、母殺しは簡単ではないということを表しているのかなと思う。カッコよく父殺し、母殺し出来たら気持ちいいかもしれないが、現実は一回の父殺し、母殺しで解決するわけではなく、何度も自らを縛るものに立ち向かっていかないといけない。
が、一方でマルチエンディングということを強調するならば、全てのエンディングは等価である。その中で、自らの信じる「TRUE END」を選び取ることは、作品の終わりに近いほど「真のエンディング」である、という映画の流れに逆らって選ぶということなんじゃないかなと思った。
