5.0
テーマは「SOURCE」、写真を通して、原点に戻るのか、ここを出発点としてみるのかを考える
テーマは「SOURCE」だそうです。そのテーマの元に10カ国、13組のアーティストの作品が12の会場で展開する。主催者によるとSOURCEは「源は初めであり、始まりであり、すべてのものの起源である」とのこと。そして「人生の分岐点にかかわらず、私たちは岐路に立っており、原点に戻るか、新しいことを始めるかの間で揺れ動いている」としていて、できる限りそのつもりで見てみました。結局、実は岐路を通り過ぎてかなり経っていて、原点はあまりに遠く戻ることも出来ないのでは、という軽い絶望を感じてしまうのでした。
とは言え、写真の面白さにどっぷりと浸ってしまいました。特に、二条城の二の丸御殿 台所・御清所を会場にしたティエリー・アルドゥアンの「種子は語る」と京都新聞ビル地下1階の印刷工場跡を会場にしたヴィヴィアン・サッセンの「PHOSPHOR|発光体:アート&ファッション 1990–2023」はいろいろなことを忘れてしまうような楽しさがあった。「種子は語る」は色も形もかなり個性的な種子を大きくプリントして屏風に仕立てたものや、特殊なビューアーに仕込んでポジフィルムをのぞき込んでみるものなど、写真の見せ方もユニークでした。「発光体」は色の洪水という感じ。地下にある元印刷工場なので、自然光は一切入らない場所で、色鮮やかなプリントとプロジェクションを使ったインスタレーションで目がくらんでしまった。
もちろん、硬派のドキュメンタリーも充実している。例えばジェームス・モリソン「子どもたちの眠る場所」では、世界各地の子供たちのポートレイトと寝室の写真を展示しているのですが、それこそパレスチナ難民キャンプにいる子供からイスラエル入植地に住む厳格なユダヤ教徒の子供まで、という感じ。貧富の差などというレベルを超えたものがそこにある。
どの会場も力作揃いで、見る側の体力と時間が必要です。ちなみに、見るのに2日かかりました。