4.0
面白いです。それに、これだけの作品に触れられるなんて、もうめったにない機会です。
酒と借金と引っ越し117回。幕末明治を駆け抜けた破天荒絵師、豊原国周。静嘉堂文庫美術館にひきつづき太田記念美術館の「生誕190年記念 豊原国周」全作品前後期で完全入替のため二度行くことになりました。すっかり国周の世界に首まで浸かった感じです(笑)。作品の状態が良いためか、配色の美しさは見どころの一つです。迫力のある役者絵が、特に役者大首絵シリーズは、鮮やかな背景と画面から飛び出すような構図が特徴です。かつての写楽とはまた全く違った魅力だと思います。それから役者絵以外も、、繊細な雰囲気を湛える美人画、武者絵、風景画、肉筆画、までこなす、なかなかの器用人絵師ですね。同時期の芳年ファンの私ですが、今回これだけ沢山沢山の国周を観て、全く「恐れ入谷の‥‥」です。実際に演じた役者ではなく、人気役者が人気歌舞伎の役どころに扮する「見立て絵」が多くありましたし、歴史上の事件やよみうりをにぎわす話題の出来事、巷の人々に人気のあれやこれやも、着物の柄も、背景に出来たばかりの橋やらまでを描き込んだり。超おもしろ!! きっとこの時代にも平賀源内みたいなのが居て、国周の横で「あれ描いたら当たるでぇ」とか言っていそうな気がします。地階の作品はガラリと変わった上品な感じで、あと、晩年の肉筆画は実に素晴らしく、画力が半端なかったことがよく分かります。やっぱ北斎を彷彿とさせます。「絵では北斎にかなわないが、引っ越しでは負けない」と言っていたそうですが。