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錦絵とはまたひと味違う、国芳の魅力満載です
現代でも大人気浮世絵師・歌川国芳。その団扇絵だけを紹介する史上初の展覧会「国芳の団扇絵 猫と歌舞伎とチャキチャキ娘」、前期の終盤で行って来ました。国芳と言えば、勇壮な武将を描いた武者絵や妖怪、猫、コミカルな笑いを描いた戯画をはじめ、あらゆるジャンルを手がけたことで知られていますね。美人画も、意外にも沢山ありますね。団扇は江戸っ子にとって夏の暑さをしのぐための必需品であると同時に、デザインを楽しむファッションアイテムでもあり、また歌舞伎ファンにとっては、「推し」の役者を応援する「推し活」グッズでもあったわけです。今の若い子たちのアイドルの写真入り団扇に思いっきりキラキラの縁を付けて、コンサート会場の出待ち入り待ちする姿に、少しも変りなかったりするんですね。この団扇をつくるための浮世絵=団扇絵も人気が高く、特に人気絵師だった国芳の団扇絵は、確認できるだけでも600点を超えるのだそうで、驚きます。今展には、保存状態が良い優品(全て個人蔵)が揃い、初展示作品も含め、前後期合わせて220点(前後期完全入替)が並びます。「世界初! 団扇絵だけの国芳展」と謳われていて、たぶん非常に貴重な機会なのでしょう。作品は未使用状態で極めて保存状態も良く、復刻??と思ってしまう程です。団扇絵ですから当然「空摺」「布目摺」「正面摺」などの技法はみませんが。江戸庶民の夏を華やかにまたは楽しくした団扇絵、色彩、女性のしぐさ、可愛面白い猫のしぐさ、芝居や物語の場面の切り取り、構図、まあとにかく凄いです。最初は、もっとも初期に描かれた国芳の団扇絵、忠臣蔵のパロディ《道外忠臣蔵五段め》をはじめ、戯画のみならず、幅広い仕事が紹介されていました。団扇の表裏を活かした団扇ならではの工夫の作品もあり、面白いです。当時の流行りや出来事等を、直ぐに題材にする国芳のセンスも‥、ホント最高です。こんな団扇でおこした風は、さぞや気持ちよかったのでは?
豪雨の日のせいでしょうか、前期終盤にもかかわらず、珍しく空いていました。いつもは多い外国の方々のグループも、ほとんどいらっしゃらなかったようです。後期もまた来ます。楽しかったです。