5.0
念願の御舟回顧展に大満足!
速水御舟は好きな日本画家の一人ですが、一番惹かれるのは、不慮の事故で左足首を切断したにもかかわらず、画業に対する影響がまったくなくブレない芯の強さ、新しいことへの挑戦を止めない向上心、現代を生きる我々に対しても、学ぶべきレジリエンス力を感じる作家です。2年前、山種美術館さんの「速水御舟と吉田善彦~師弟による超絶技巧の競演~」で、初めて「炎舞」「名樹散椿」を見て感動したことを覚えています。
今回、速水御舟の初期から晩年までの作品を俯瞰的に見ることができ、知らなかったことが多くあり、刺激的な展覧会でした。
写実的な静物画においては、メインビジュアルになっていた「鍋島の皿に柘榴」もすごかったですが、私的には、「果物」の方がものすごくリアルで、完熟をすぎた林檎から甘いにおいが漂ってきそうな絵でした。岸田劉生の「静物(土瓶とシュスの布と林檎)」の影響を受けて描いたそうですが、林檎の質感とハンカチの質感のコントストがより林檎の完熟感を演出していて引き込まれました。
晩年、御舟が目指した絵が、写実性と装飾性の融合ということで、「暁に開く花」を見ると、一見リアルな朝顔の花や葉、蔓が表現されているが、よく見ると、花や葉の色や形の類似性は、琳派を思わせる装飾性を感じ、銀砂子によって幻想的な雰囲気が漂い、写実性と装飾性の融合を目指した意図が感じられる傑作だと思いました。
最後にいつもはポストカードを数枚購入するところを今回は図録を購入、この余韻に浸りたいと思います。今後も御舟についてもっと学んでいきたいと思います。