速水御舟展
茨城県近代美術館|茨城県
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御舟展とあれやこれや。
まず、チケットプレゼントして頂き、素晴らしい絵を堪能することが出来ました。
アートアジェンダ運営様、ありがとうございました。
先に企画展の感想から。
当方御舟初心者です。
前回の企画展もそうですが、茨城県近美は展示の作り方が上手いなぁと。
すごくわかりやすい。
他の方の感想で「代表作が少なく渋め」とのお話がありました。
それを見て「まずい(-_-;)・・・」と思った私は少し御舟について予習を試みました。
参考図書「別冊太陽 日本のこころ161 速水御舟(株式会社平凡社)」の目次と企画展の章立てを見ますと(以下かっこ内は企画展の章立て)、
・画塾からの出発ー伝統的絵画にならう、南画的手法の試み
(第1章 閉塞からの脱却ー模写から写生へ)
・細密描写を極めるー群青色に囚われて、静物的な風景(←略あり)
(第2章 写実の探求ー細密描写)
・古典を昇華するー写実、装飾、象徴の豊かな調和
・同時代の表現者としてーヨーロッパ・アフリカの印象、女性を描く、自然を見つめなおす、墨の魅力、最晩年の作品
(第3章 古典との融合ー単純化と平面性)
要するに展示内容はほぼ年代順に近い構成ですので、御舟初心者でも問題ありませんでした。
また私のtwitter相互フォさんが「山種美やその他単体で見た作品(代表作)が点だとしたら、その間を埋めてくれるかのような展示で、見て色々腑に落ちてすっきりした」と書いてらっしゃいました。
逆に言うと、ここでは代表作の表現へ到達するまでのトライ&エラーがしっかり見られるので、初心者の私は、この後は点を一つずつ集めていけばいいというわけです。
(5/20~7/17 山種美術館で「小林古径と速水御舟」展がありますね)
作品が約100点、素描が約30点。
この素描も、描こうとしているポイントが年代毎にはっきり違うのが見て取れてとても面白かったです。
第3章だけが、西洋モダニズムやってみたり、リンパ―になったりして、駆け足というか若干詰め込んだ感じはあったかな。
御舟は40歳で亡くなっているため、それを考えるとこの章立てを見るだけでわかるくらい、表現探求の凄まじい情熱に圧倒されました。
もう一つ、解説の中に御舟の「ものの存在感」なる言葉が出てきて、その言葉の感覚が細密描写時代の作品を見ながら妙に引っ掛かって、その他の作品を見ている間も、見終わっってからも、頭の中にずっと残っていました。
御舟が描きたかったものは何なのかしら、と。
絵を見たこちら側の感覚を呼び覚ますようなものかなぁ、と・・・。
「寒鳩寒雀」という死んだ鳩と雀4羽が吊るされている絵がありました。
実際に生き物が目の前で死んでいたとして、物体としては生きていても死んでいても同じ肉や骨だと言えるかもしれないけれど、それでもよく見れば、死んでいるか生きているかはわかりますよね。
「ものの存在感」というのは、目で見える限りを超えて、そこにある存在のこと、かなぁと。
そういう意味で考えると、メインビジュアルのざくろとお皿は全く違うものですが、「そこにある存在」として平等に描かれている、という感じがします。
お皿を触った時の感触とざくろに触ってみた時の感触を思い出せば当然違うのですが、感覚としては両方とも鑑賞者の内側に既にあるんですよね。
ただの写実であればそこまでなんでしょうが、この方の場合はそれプラス、「これは日本画だ」という感覚も感じられて、そこでも、じゃあ自分が感じている「日本画」って何なんだろう・・・と考え込んでしまいました。
もう「絶対居心地のいい絵なんぞ描いてやるもんか!」みたいな怨念のような何かを感じます・・・迫ってくる・・・。
・・・なんか凄いんだよな。言葉にならない・・・。
この「自分の描いているのは日本画だ」という感じは、晩年へと繋がっていき・・・。
この晩年の作品がまたすごくいいんだよなぁ~。
最後に展示してあった「暁に開く花」がめちゃくちゃよかった。
茶色い朝顔の絵で全体に銀砂子がぶわ~っとあって幻想的な雰囲気。
これはこの先の絵が見たかったですよねぇ・・・。
と、ここまでが御舟展の感想です。
次、簡単に常設展の感想。
常設①。
一番時間かけてみたのは中村彜の人物画でした。
東京ステーションギャラリーの佐伯祐三展で「・・・自画像には中村彝の影響が見て取れる・・・」と解説にあり、あらためて「なるほど~」と見入った次第です。
4点の中村彝の作品が見られます。
菱田春草の朦朧体全開の「冨士」、ここにもいたか片岡球子の「春の富士(梅)」、しかし結局小川芋銭の草虫図が可愛すぎ♡
次常設②は木村武山の彩色杉戸絵。部屋いっぱい杉戸絵。
迫力満点の富士がよかったけど、こんな部屋だと落ち着いてご飯食べられないなぁと思いました(笑)。
以下、あれやこれや、です。
お時間ある方だけお読みいただけたらと思います。
茨城県近美へは3時間越えの遠征となる為、正直行くか悩んでいました。
応募へ後押ししたのは
①twitterでの相互フォさん達の盛り上がり方がすごかったこと。
水戸近辺のアート・建築関係のtweetが多く、如何に水戸やその周辺に見所が多いか熱く語られていて、「御舟も観たいし、茨城県近美も行きた~い!」と濃いやり取りが飛び交っていて煽られました(笑)。
自分は前回行った時に水戸と言ったら偕楽園しか思い浮かばなかったので(-_-;)・・・、
と書きながらも、偕楽園は未踏の方には是非お勧め致します。
好文亭という素晴らしい建物があり、3階まで上ると千波湖が一望できる絶景ポイントがあります。
建物自体の魅力もさることながら、屏風もたくさんあり、中にカフェもあり
(このカフェも実は眺望最高で、混んでて入れなかった方続出のようです。
空いてたら是非お勧め致します)見所多しです。
もう少ししたらつつじも見所かと思います。
そして、今回の御舟展の中でも交友関係が触れられている岸田劉生の企画展=「画家 岸田劉生の軌跡」@笠間日動美術館へも行ってきましたので、最後にそちらのレポートもします。
笠間日動美、推しです!
↑と思っていたのですが、ここで筆がつまずきまして(笑)、
レポートが会期中に間に合いませんでした <(_ _)>
それくらい笠間日動美はなんだかボリュームがっつりなんですよ。
劉生も本当に良かったです✨ 素晴らしかった✨ので書きたかったのですが・・・
別の機会にさせて頂きます。ごめんなさい!
このサイトでも「笠間日動美術館」で検索すると、
日動美のコレクションで行われた企画展がヒットします。
コレクションで企画が起こせるほど持ってる、ということです。
笠間自体がアートで村おこししているようで、
そこまでレポートできる機会を作れたらなぁと思っています。
②もう一つが、3月頭に行ったMOA美で、斉藤茂吉と五浦(=茨城県北茨城市)の作家(横山大観、下村観山、菱田春草、木村豊山)との交流の話が解説の中でに触れられていたこと。
展示としては春草と大観の絵がありました。
当然茂吉も上記の作家さん達も、この頃の作家さんの多くに、色々な影響で「自然の中で生活するのは芸術家の理想」というような発想があったと思われます(ここでは宗教的な話には触れません)。
茨城県近美で配布している「五浦の作家」の解説には、色々な事情があったとしても「当人たちは『東洋のバルビゾン』と意気揚々としていた」とあります。
この解説には今村紫紅、安田靭彦、小林古径、前田青邨なども名前が挙がっていて、近美の常設で観られることもありますよね。
さらに「五浦が近代日本画の発祥地として呼ばれる由縁も・・・」とあるのですが、自分はそんなことさっぱり知らなかったので、読んでびっくりしました(笑)。
そういうわけで、茨城県近美は歴史的存在意義も確かな素晴らしい美術館です。
そこが力を入れまくっている企画展、是非観たいと思いました。
本当にこちらの美術館、推しです!
機会がありましたら是非!
(リンク貼れてなくてごめんなさい!)
日本三名園 偕楽園
https://ibaraki-kairakuen.jp/
笠間日動美術館
http://www.nichido-museum.or.jp/
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