魂を込めた 円空仏 ―飛騨・千光寺を中心にして―
三井記念美術館|東京都
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円空仏、やっぱ凄いです。飛騨、いいな!!
現存する「円空仏」は約5000余体ともいわれています。私も結構「円空仏」好きな方で、ずいぶんあちらこちらの展覧会や寺などで「円空仏」観させて頂いています。でも「円空」オンリーでの、しかも主に一地域に伝わる作品、という展覧会はとても珍しいと、私も思いました。
円空は晩年を飛騨の地で過ごし、千光寺をはじめ近隣地区で多くの像を制作していたとか。飛騨地域は自然に恵まれ、古くから木材の産地として有名で、家具木工の伝統技術は「飛騨の匠」といわれ知られていますが、円空がそんな地の樹々たちの中に神仏を感じ、修行と仏像制作に励むことになったのも、分かる気がしました。
行ったのは、平日の昼過ぎのやや混雑気味になる時間帯。でもまだ会期初盤だったので、観覧者はそれなりにはいるものの、未だまだ空いていてゆっくり観ることが出来ました。
入館すると重厚な第一展示室では早々に、千光寺《地蔵菩薩立像》の優しさと、霊泉寺《愛染明王坐像》の迫力に魅せられます。そして今展で私が最も感動したのは第二展示室の《柿本人麻呂坐像》。右手を装束の中に入れて座り、優しい笑みを浮かべたお姿。完全に見とれてしまいました。ぐるりと回ってみれば割合薄目の像なのに、見事な立体感です。円空の人麻呂への敬愛のほどが伝わります。千光寺に遺されている円空の歌集『袈裟山百首』は、『古今和歌集』からの本歌取が九十首に及ぶのだとか。円空にとって、人麻呂は「歌聖」、もう神の内だったのだろうと、感じました。
第3展示室には2mを超える《護法神立像》と《金剛神立像》。そして第4展示室では、今展のメインビジュアル千光寺《両面宿儺坐像》や東山白山神社《如意輪観音菩薩坐像》に出会えました。見事です。両面宿儺は大和朝廷に従わなかった飛騨の豪族で、飛騨地域では農耕や祭祀を指導したり、中央政権と戦って地域を守ったりの英雄で、やがて地域の守護神となった様です。千光寺の開祖という伝承は今展でも紹介されています。同様に善久寺にも宿儺の建立という伝説もあるとか。両面宿儺像や宿儺が変じた十一面観音や「両面宿儺出現記」や宿儺が最後の食事をとったという云われが伝わる御膳石などが、色々と残っています。多神教の仏教ならではの両面宿儺、歴史民俗学好きの私はちょっとワクワクしてしまいます。昨今では両面宿儺といえば人気マンガ『呪術廻戦』で知られているのだそうですね。まあ飛騨での宿儺と「日本書紀」(為政者側の記述)の宿儺と、芥見下々氏の描く宿儺とは、みな大分イメージが違う様で‥。まあ、円空の彫り現した《両面宿儺坐像》は、力強よく風格もあっても、慈悲の表情や静かな思念が見え、異形ではあっても、この地を守る神にしか見えませんでした。
頭上に龍や蛇や馬やら、生き物の頭などを載せた姿で表される菩薩や十二神将などは多くおわしますが、円空仏ではよく、菩薩の頭以上に大きく勢いをもって表現されているのが、とても面白かったです。材にこもる魂を感じつつ、削ぎ落せるものは削ぎ落し、表わしたいものは誇張にも見える勢いで、それこそ魂を込めて表わす円空。やっぱ凄い!!としか言いようがありませんね。
最後の展示室には、ひとつの材からつくられた作例として千光寺《不動明王立像及び矜羯羅童子立像・制咜迦童子立像》の3体や、観音信仰をもとにした、まさに壮観の《三十三観音立像》も並んでいました。
何れも素晴らしく、見どころも満点の展覧会でした。いつか飛騨にまた行ってみたくなりました。
気づけばもう一月が過ぎ、会期末が近づいています。季節はどんどん春めいてお出かけ日和も多くなることでしょう。日本橋も色々と注目イベントが目白押しです。仏像は好きでも、粗削りで素朴な円空仏はちょっと、と思っていらっしゃる方も、ぜひ、この機会に円空が感じた樹木に宿る魂と円空が込めた祈りに、対面してみてはいかがでしょうか。
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