甲斐荘楠音の全貌 絵画、演劇、映画を越境する個性
京都国立近代美術館|京都府
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とにかく観に行ってください!今年観るべき展覧会かと。
☆評価なら☆5つです。
待ちきれず初日に出かけてきました。予想をはるかに超えて凄かったです。
東映、東映太秦映画村 の全面的な協力あってこそ成立した展覧会ですね。
2017年に京都国近美で開催された「岡本神草の時代展」で、楠音の「横櫛」などを観ており、この時代の京都、国画創作協会の面々が描く作品がどのようなものであるかは、一応分かっているつもりでした。改めて甲斐庄楠音の絵画作品を観て、彼の描く女性像の手、指が繊細で美しい。自身が女形も演じたりしたことから、日舞も習っていたのかなぁ。スケッチは先に身体を描いて着物を着せていますね。「裸」を「肌香」と書いた楠音さん、絵からその女性の内面、香りさえも描こうとしたのでしょうか。一方、「畑の姥(高雄の物売り)」労働する女性たちの足や腕はシッカリ逞しく描かれており、ちゃんと描き分けられていました。
日本近代美術史がご専門の京都文博の学芸員さんが、Twitterで「甲斐荘楠音の『島原の女』を1年ほど前に見せていただいた時、レオナルド・ダ・ヴィンチの聖アンナにそっくりだと思い、これは新知見に違いない、論文書けるかもと色めき立っていたのだけど、京近美さんの甲斐荘展図録を今日拝見し、すでに2008年にドリス・クロワッサンさんが指摘していたと知る。」ということで『島原の女』を前にあっ!この作品だとマジマジと眺めて確かに―と思いました。楠音はダ・ヴンチやミケランジェロに強く惹かれていたと『畜生塚』の解説にもありました。また、赤い着物を着て、手で草を摘まんでいる個人蔵の『女人像』については、「デューラー踏まえている・・・岸田劉生が肖像画によく描いていたモチーフ」のような内容をtweetされていて、この時代のデローっとした楠音周辺画家の作品に劉生のデロリとした麗子像が影響していたのか?劉生が麗子像を描いたのは京都へ転居する前ですけれど、劉生がデューラーに影響を受けたのは有名な話で、北野恒富のこの時代の作品を観ても、大正という時代がそういう絵を描かしたこともあるのでしょうか。いろいろと興味深いです。
歌舞伎や芝居も大好きで、自分も演者にもなる。どうしたら美しく見えるか、描けるかを常に考えていたでしょう。浮世絵なども当然勉強しており、『遊女』は、惚れ惚れするほど美しいです。
絵画もさることながら、スケッチやスクラックブック、写真などの資料には興味深くてもう釘付けとなりました。
展示室いっぱいに吊るされた映画の衣裳、壮観でした。古い映画やポスターがお好きな方にはたまらないでしょう。
映画が一番の娯楽の時代、映画俳優はまさに「銀幕のスター」だったでしょう。吊るされた豪華な市川右太衛門の衣裳、丈が思ったほど長くなく、昔のスターは顔が大きいので、背は映画からの印象より大きくなかったのかもなぁと思ったりもして。楠音が飛び込んだ時代も良かったし、彼にとって風俗考証や衣裳考証の仕事は天職だったかもしれません。
展示替えは多くありませんが、私、少なくともあと1回は絶対見たいです。
京都でご覧になるなら”Catalog Pocket”を先にダウンロードして予習していくのもありかもしれません。
図録は、当然のことながら今回も鈍器の様相を呈して、お値段3200円です。
私個人としては、本展今年観るべき展覧会に入れたいし、強くお薦めです。取り敢えず見てください。
土日には人混みが嫌で近くのショッピングセンターへも出かけないのに、京都まで出かけてしまいました。内外の観光客の方も多くて、バスも電車も混んでいましたが、展覧会場は初日でまだ空いていました。評判は広まるはずで、日に日に来館者は増えそうです。それでも京都で観るのがお薦めです。
このインパクトの強い展覧会を観た後は、後を引くので、4階のフィンランドデザイン『リュイユ―フィンランドのテキスタイル:トゥオマス・ソパネン・コレクション』を眺めて癒されてください。
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- BY morinousagisan