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工業用ミシンによる超絶技巧。面白くもあり、色々考えさせられます。
「青山悟-刺繡少年フォーエバー」主に工業用ミシンを駆使して制作されるによる刺繍作品の現代美術作家、青山悟氏の、初期の作品から新作までを展覧し、その作品を通して、時代とともに社会から姿を消そうとしている様々な「消えゆくもの」へ「永遠なんてあるのでしょうか」と問いかけています。
「2階からどうぞ」と言われ、「ごあいさつ」の掲げられた展示室から回りました。品作品総数は70点。3つの展示室をつなぐアトリウムにも作品展示があります。並びは時系列ではない様子。世界地図(名もなき刺繍家たちに捧ぐ)連作?や、新聞の写真みたいな網点印刷されたものの上に刺繍が施されていたり。それから並ぶのは一見、油彩画もしくは写真を思わせる写実的な作品なのですが、実は全て刺繍であることに気づかされ驚きます。更にチラシやチケットや文庫本や吸い殻まで、刺繍でした。この辺りまでは「へぇ~凄いじゃん!」でした。《東京の朝(2005年)》、《News from Nowhere (Labour day)( 2019年)》見入ってしまいます。名画と言われる誰もが知っている超有名画家(モネ、マティス、マグリット、モランディ、クリムト、ウォーホル、河原温などなど)の作品を刺繍で表現し、そこに氏の見解が書かれていて、さらに、壁一面を使って縦軸には急進的ー保守的、横軸には個人的ー社会的のチャートが作られていて、各作品が配置されています。名画に添えられた氏自身による自筆のキャプションは、ユーモアもあって読んでいてなかなか楽しかったりします。ぼけ~と観ていたこんな私にも、次第にそれが、ただの写実や再現の刺繍ではなかったことが、伝わってきます。氏は、刻一刻と変化する私たちの生きる社会が抱える様々な問題に対し、常に敏感に反応し、ユーモラスでありながらもミシンの針でまさにチクリチクリと風刺をきかせているのです。産業革命後多くの職工たちの仕事を奪った工業用ミシンを敢えて使うことで、氏は、機械が人間の生活や労働に及ぼす影響を表現し、人と機械の関係や近代化以降の労働について問いかけをしていると言います。50代の氏が「刺繍少年」を名乗るのも、もしかするとエイジズムテーゼなのかもしれませんね。1階ワークショップ室には、なんとご本人が工業用ミシンで製作実演される様子を観たり、手の止まった時には質問も出来ます。また、目黒区内の小学校にてアーティストが行… Read More