4.0
サグラダ・ファミリアの魅力を解きほぐす意欲的な展覧会
サグラダ・ファミリアの建築美学、ひいてはガウディの創造哲学を詳らかに示そうという意欲的な展覧会だった。そのため本展は文字情報が多い。もちろん図案や模型など多岐に渡る資料が建築芸術の持つスペクタクル性の断片を伝えてくれてはいるが、章節が体系的に分節され過ぎていて個人的には少し疲れてしまった。一方、こうした趣向が存分に落とし込まれた図録は、ガウディとサグラダ・ファミリアの足跡がまとめられた事典の観があり、充実した一冊となっていて好ましい。
建造物の奇想的な造形から、ガウディ本人も独特な人物なのかと思っていた。実際、かなり独特な人だったであろう感じが展示からは伝わってきたけれども、いわゆる作家自身が芸術と同一化するような人ではなく、創造に対して謙虚な態度を保っていたことが今回わかった。たしかに複雑怪奇にも見えるガウディ建築だが、「歴史」「自然」「幾何学」を範として発展させた彼の芸術は、それゆえ時を経るごとに「成長」を感じさせるのかもしれない。
もはや聖堂が完成するという事実のほうが奇妙な伝説のようにも感じられるサグラダ・ファミリアは、これからどのように人類に継承されていくことになるのだろうか?