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『天才って謎・・・』と上書き実感する北斎
サムライとカタカナ書きされると、映画【ラスト・サムライ】を思い出します。
映画は幕末ですが、江戸時代真っ只中の時代に生きた北斎が思い描くサムライとはどんな姿なのか。
以前のブログで紹介した芳幾・芳年の武者絵=侍サムライなイメージが漠然とありましたが、さすが《画狂・北斎》の描くサムライはふり幅が大きいです。
参勤交代の武士から仮名手本忠臣蔵、信玄と謙信の川中島合戦、武蔵坊弁慶に源平合戦絵、もっと昔の日本神話まで守備範囲が広い、広すぎる。
なかでも目を引いたのは『北斎漫画 九編 出陣勇勢之図』1819年作。
これは合戦前の兵士の朝の一コマ。。。なんですけど、これを絵に遺す発想が北斎なんだよなぁと、天才の着想にただ脱帽です。
①起床して②出陣前の腹ごなしにゴハン食べて③身ぎれいに身体を拭いて④遠征中のお弁当(お米)もバッチリ準備。
⑤お米(弁当)に乗っかりながら甲冑に着替えていざ出勤!…じゃなかった出陣!!です。
この兵士、筋骨隆々とか気品ある顔立ちの『武士』な雰囲気ではなくて、お腹もぽっちゃりで顔も柔和だし、敵を討ち取る雰囲気がだいぶ少ない(笑)足軽さんな感じ。
甲冑をスーツに代えたら単身赴任のサラリーマン臭が漂います。
そうだよね、出張前だとゴハン食べておきたいし、お弁当持っていきたし、お風呂入ってサッパリしてからスーツ(甲冑)着たいよね。。。
この身に覚えのありすぎる一般庶民の感覚や生活を作品として描き残した北斎ってつくづく一筋縄ではいかないよなぁと思います。
もうひとつは『浮絵 一ノ谷合戦坂落之図』1781~89頃。
浮世絵うきよえ➡じゃなくて浮絵うきえです。浮絵は西洋の通し遠近法を取り入れて空間に奥行きを強調した絵で、北斎は20代からこの描き方にチャレンジしています。
海沿いに陣を張った平家一門を手前に大きく描き、右上の崖を源氏の軍が垂直落下の勢いで縦一列に駆け下りてきています。
人物大写しの侍絵も素敵ですが、こうした全体の動きを俯瞰したような絵図は、場面の把握にとても分かり易い。そしてちょっとスペクタクルな壮大さも感じます。
富嶽三十六景でも唸る北斎の抜群の構図センスです。
展覧会は浮世絵よりも絵本や漫画など、紙面の展示が多いので、北斎の非凡さが改めてうかがえるというか、面白いですね。
海外で抜群の人気を誇る北斎作品の展覧会は英語の解説が充実してます… Read More