4.0
余白の美
恥ずかしながら存じ上げないアーティストだったが、チラシにあった精緻な作品にそそられ、本展に足を運ぶことにした。
会場に踏み入れた途端、静謐な空気が漂っているのを感じた。全体的に抑えた彩色に繊細な筆致で描かれた作品が並ぶ。決して強く何かを主張しているわけではないが、観る者の心に迫るものがある。それは何故かを考えながら鑑賞を続ける中、象徴的な作品の前で足を止めた。
「六曲屏風」と題され、それぞれに墨の濃淡を生かし花鳥風月が質素に描かれており、全ての上部半分以上が余白である。
文学において余白(=行間、省略等)を設けるというのは、つまりあえて書かないことにより読み手に余韻を残したり、作品に深みを与えたりする、読み手の想像力に委ねる技法である。
それがこの「六曲屏風」でも非常に効果的に使われていると感じた。何も描かれていない余白に水、空、風を感じさせ、主題を前面に押し出す見事さである。
小村雪岱の作品は多くのものを詰め込み過ぎず、余裕のある作風であるが故に観る者がそろぞれの詩情を投影できるので、多くの人が彼の作品に惹き込まれるのではないかと感じた。
後半に展示された意匠家として残した作品の幅広さ、数の多さにも驚かされる。特に本好きとしては、手がけた泉鏡花や谷崎潤一郎といった文豪の小説本の装丁を沢山観られたことは興味深かった。日本画家ならではの古風なものもあれば、ウィリアム・モリスのような西洋的なデザインもある。そのどれもが洗練され、斬新な印象を受ける。多彩な才能が時代を超え、今なお息づいていると感じた美術展だった。








