密やかな美 小村雪岱のすべて
あべのハルカス美術館|大阪府
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直線の静謐
「おさん」に一目惚れした。黒の線と地の色だけの絵、真っ直ぐな線で描かれたたくさんの傘。何時代の人かも調べずに行くことに決めた。大正初期から戦前に活動した人であるため、ちょうど大山崎山荘美術館「くらしに花咲くデザイン――大正イマジュリィの世界」くらいの時代である。
準急と準特急を間違え、予定より遅くに着いた。おまけに南方町に行くつもりで南森町に行く電車に乗っていた。車内で「みなみもり」という駅名表示を見て、「南方でみなみもりと読むのか、さすが大阪の駅名だな」と感心していた。
最初に展示された「青柳」でさっそく心奪われた。直線で成り立つ日本家屋を繊細な線で描いている。そして日本家屋特有のがらんとした空間が静謐さを生み出している。線が魅惑的であるため、花が咲いている木よりも、花の咲いていない柳や松葉の方が美しく見えた。
雪を描いた絵では、降る雪は雪が積もった真っ白な背景では溶け込んでしまい、建物の壁に描かれた降りしきる雪が目立っているせいで、壁が水玉模様みたいになっていてかわいかった。
泉鏡花の装釘をしていた。芥川龍之介もこの本を買ったのか、いや鏡花から贈られていたんだろうなと思い、芥川の網膜に映ったのと同じものを見れてテンションが上がった。鏡花全集(これが刊行される際、芥川もコメントを寄せている)の裏表紙に書かれた作品名の文字は、絵がそのまま文字になったようで本当に美しかった。
当時、プロレタリア文学や新感覚派が登場する中、日本美の世界に留まった鏡花たち、そして人々の娯楽となった大衆小説の挿絵(これは江戸時代的なものを引き継いでいる)など、日本文学史ではメインストリームに置かれづらい本たちにスポットライトを当てられていたのが面白かった。
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