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アジャンター&エローラ石窟寺院 インドの世界遺産

アジャンター石窟寺院内部(インド・マハーラーシュトラ州北部)

現在は、好きなときに飛行機にのって海外旅行へ!といったことが難しい日々です。近頃は、以前海外を旅したさまざまな記憶を振り返りながら、想像の旅の再訪をしています。海外での旅の思い出で、芸術や美術との出会いをご紹介したく、前回のローマ編に続いて、今回は、インドの遺跡(宗教美術)についてのアートブログです。


「アジャンター」「エローラ」という地名を遺跡好きの人なら聞いたことがあるでしょうか?


1983年に世界文化遺産となった、岩山を掘って造られた寺院や修道院などの建造物で、「アジャンター」と「エローラ」を合わせて、宗教美術の傑作と言われる二大石窟寺院群です。


インドの西海岸に面する都市ムンバイから東にあるアウランガバードという街を経由して、列車とバスで1日半ほどかけて到着したところにそれらの石窟寺院群があります。


「アジャンター石窟寺院」は、ワゴーラー川という歪曲した川沿いの断崖に、約550mにわたって断続的に築かれた大小30ほど石窟群で、仏教の石窟寺院です。


「エローラ石窟寺院」も近くにあり、2つの遺跡群を1日で周ることができますが、こちらは、仏教からヒンドゥー教、そしてジャイナ教(不殺生の実践などを説く、インド起源の宗教)も含めた34の寺院や修道院が、約2キロにわたって続きます。順に見ていくと、宗教美術の変遷を辿ることができます。


アジャンターの遺跡群は、紀元前1世紀ごろからあったといわれ、エローラは時代が下がり、6~7世紀頃には造られていたと言われています。


世界遺産なので、さぞや世界中からの観光客でにぎわっているのかと思っていましたが、古くからある遺跡で場所もやや辺鄙なところにあるためか、国内の旅行者のほうが多く見られました。また、観光地として開発されている感じもなく、石窟の内部のほとんどは、照明などもなく薄暗い状態で、スマホのライトを当てながら鑑賞していました。石窟によっては、ライトを当てた瞬間に、内部で休んでいた大量のコウモリが飛び立っていくようなところもありました。


アジャンター石窟群  第26窟

沢山ある石窟の中には、破損してしまっているものも多くありますが、状態の美しい、見事な壁画や仏像彫刻も多々残っています。こちらは、アジャンター石窟群の中で、とくにハイライトとなっている第26窟。ここはライトアップされていたので、細部までしっかり見ることができます。ダイナミックかつ繊細な、装飾性の高い美しく見事なレリーフです。


アジャンター石窟群 第26窟 涅槃仏

こちらも、アジャンター石窟群 第26窟にある、穏やかなお顔の涅槃仏です。


アジャンター石窟群で観られる仏教の彫刻や壁画は、日本人の精神にも馴染むような、親しみある雰囲気が感じられましたが、それもそのはず、こちらに描かれている壁画は法隆寺金堂壁画のモデルになっているとも言われているそうです。


「エローラ石窟寺院」では、仏教のみならず、その後、盛んになっていくヒンドゥー教やジャイナ教の寺院や修道院の石窟が続いていきます。仏教は、衰退してしまい、エローラ石窟寺院群を観ていても、すっかりヒンドゥー教の彫刻や壁画に置き換わっていく様子が見て取れます。


エローラ石窟群 カイラサナータ寺院

こちらは、エローラで最も重要な遺跡、第16窟、ヒンドゥー教のカイラサナータ寺院です。


この画像は一部のみですが、全体を俯瞰して見ると、仏教では、仏教世界の中心にある神聖なる山とされる須弥山(しゅみせん)とも言われ、ヒンドゥー教やジャイナ教などにとっても聖地である、チベット高原にある「カイラス山」をイメージして造られています。全体が岩山から掘り出されて造られているという、圧倒的な存在感があります。


上部から全体を俯瞰してみると、まるで立体曼荼羅のようであり、マチュピチュやアンコールワット、ボロブドゥール寺院などの遺跡も思わせる壮大さがあります。


エローラ石窟群

エローラ遺跡では、いわゆる日本人にも馴染みのある仏像の姿から、肉感的な雰囲気に変わっていきます。


ヒンドゥー教やジャイナ教の神々や、聖獣である獅子や象などの彫像が現れてきます。



エローラ石窟群

男女の愛し合う官能的な彫像もたくさん登場します!


インドでは、仏教の石窟寺院が造られた紀元前1世紀ごろから、やがて仏教が衰退し、ヒンドゥー教が盛んになっていった時代の流れを、ここアジャンターとエローラの遺跡群から感じることができます。


精神性のだいぶ異なるものに、取って代わられていく様は、驚きにも満ちていて、一体なぜ仏教がここまで衰退したのか、そして特にヒンドゥー教が、インドで現在まで多くの人が信仰するに至る大きな影響力を持つようになったのはなぜなんだろう、という疑問を抱かずにはいられません。


インドではすっかり廃れた仏教ですが、当時の面影を残しながら、仏教美術として日本で質高く発展したことは、喜ぶべきことだと感じています。


観光に来ていたインド人ファミリー

最後に、遺跡内で出会ったインド人ファミリーの写真。

インド人は笑顔が魅力的な人が多くて、旅行者にはとてもフレンドリーです。


現在、インドはコロナの感染者数が、世界でアメリカに次いで2位となっていて、感染の広がりがとても心配です。

心から収束を願いつつ、また訪れられる日を心待ちにしたいと思います。


プロフィール

Audrey
高校生の頃から、美術館には良く通っています。イタリアのウフィツィ美術館、スペインのプラド美術館を訪れて以来は、中世ヨーロッパの美術がとくに好きになりましたが、日本美術も大好きで、とくに浮世絵は、葛飾北斎の大ファンで、その他、北斎の娘、葛飾応為、歌川国芳、月岡芳年、近代の小林清親などが好きです。
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