鑑賞レポート一覧

版画家たちの世界旅行 古代エジプトから近未来都市まで

版画家たちの世界旅行 古代エジプトから近未来都市まで

町田市立国際版画美術館|東京都

開催期間:

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過去企画展を再構成したもの。

前期と、後期の9/18の巌谷國士先生の講演会目当てで2回行きました。
ですが、「2021年の、『映える風景を探して』が緊急事態宣言で1ヶ月以上会期が短縮されたため再構成した企画展」だった、というのを講演会の後SNSで知り、公式HPの文章を見逃していたこちらもいけないのですが、チラシにも書いてないし、もうちょっと積極的に教えてほしかったなぁと思いました。
「前回展とは別物でした」という感想も上がっていましたが、上記の内容を知り「それなら前に見たから今回はいいや」という方もいらっしゃったよう。
私は前回の企画展を見てないので、レポートを書くのに躊躇し・・・。
できたら・・・「再構成した部分」がわかる方のレポートが読みたかったです(;^ω^)

今回特に感じたのは、いつもより解説が少ないこと。
もう「物量&解説多い」のは名物ですから(笑)、これはキープしていってほしい。
再構成だからかな? 次回展に期待します。



以下、巖谷先生の講演会で企画展のポイントだなぁ~と感じたところと、個人的な感想です。

・16~19世紀までの西欧の版画(絵)がほぼ時系列で見られる。

・第1章は「イタリアを目指す旅」だが、この頃はイタリアという国はまだない。ヴェネチアの観光化が早かった。

・初っ端のピーテル・ブリューゲル(父)の「改悛のマグダラのマリア(追われて逃げてるところ)」は、マリアがどこにいるかわからない位端っこでちっさい(笑)。そもそも風景を描きたかったのでは? 
 また逃避行というのは一種の旅であり、キリストの生涯を考えると人生まるっと旅だったと言える。
 17世紀までは肖像画や宗教画が主流で、風景画はあまり描かれていなかった。ただフランドル地方は非主流の風景画が最初に確立し、独自の文化が花開いた。

・カミーユ・コローはバルビゾン派と思われているが、他の作家が現地へ住み着いたのと違って、コローは生涯旅していた。イタリアが好きで3度も行っている。←意外でした! 余談ですが、映画「シベールの日曜日」にコローの住んだ町が出てくる、とのこと。

・(感想)ここで「グランドツアー」という旅関連の企画によく出てくるキーワードが出てきました。お金持ちがツアー=旅に出て、お土産としてこういう版画を購入してくれるので、そういう目的でよく作成された版画です。写真の代わりのような存在意義とそれに賭ける気合(超絶技巧・・・細かい・・・)が感じられました。
 半面ホイッスラーみたいに、軽いスケッチみたいな余白の多い版画を見ると個々の作家性も存分に感じることもできて、充実のコーナーでありました。


・(感想)第2章「オリエントをめぐる旅」は、「版美さん、エジプト記好っきやなぁ~」と思う位何回も見てますが、今回は今まで見たことのない扉絵が出てて面白かったです。ギャラリートークで「オリエント」という言葉に関しては色々差別的な意味合いも含まれる場合もあり・・・という説明がありましたが、そこも含めて解説にしっかり明記してほしい。

・エジプト記は、ナポレオンによる国家プロジェクトであらゆる分野のプロ160人位がエジプトへ送り込まれ、そこで作られたもの。この人達の多くがエジプトに残って研究を進めた為ロゼッタストーンの解明に到った。この頃のスフィンクスはまだ半分砂に埋まっている。1926年に掘り起こされている。←言われてから「あ、ほんとだ!」と思いました(笑)

・ある一時期からオリエタリスムが低く見られるようになる→植民地政策へ
 (ドラクロワ「ムーア人騎兵の遭遇」を例に。)

・(感想)今回1番見られて良かったと感じた、メインヴィジュアルのエディ・ルグラン「マカオとコスマージュ」。色彩感覚も好きですが、押し寄せる移住者により原住民が生活の変化を余儀なくされ別の新天地を見つける、というストーリーの絵本。映像で全て見られるようになっていて嬉しかったです。

・エディ・ルグランは、たむらしげるや堀内誠一が真似している位、影響大な作家。


・第3章「絵になる風景を発見する旅」=ピクチャレスク・ツアーです。ここ少ない・・。

・(感想)第4章「都市に集う芸術家の旅」。留学して作品を作っている人(本人が旅人)や観光客を斜め目線で描写したヴァロットンやら、ここから俄然面白くなる。難民になって移住することも含め、5章「現代の旅する芸術家」と共に、インパクトのある作品が勢ぞろい。クリストとジャンヌ=クロードの「モニュメンツ」をここで見るとは・・・。

・モンドリアンのシルクスクリーン「ブロードウェイ・ブギウギ」は都市を上から見た作品。←なるほど!


今回巖谷先生のお話を伺って確信しましたが、版美って「作品を見て楽しむ」だけじゃない企画が多い。超文系。
例えば5章なんて戦争でヨーロッパからアメリカに移住した作家だったりして、住んでるけど旅人目線だったりもする、とか、ほんと一筋縄でいかない、もの凄く考えさせられるような深い構成が毎回成されていて、作品を選んだ方の意図を毎回謎解きのように掘っている感じ。
本当に凄いなぁと思います。



アートアジェンダ公式様からチケットを頂き、鑑賞することができました。
ありがとうございました。
劣等生で、会期中にレポート上げられず、申し訳ありません<(_ _)>
次回は頑張ります!

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micco3216さん、morinousagisanさん、karachanさん、uchikoさん、Sukekiyo-Acckermanさん

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