永遠の都ローマ展
東京都美術館|東京都
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彫刻に見る古代ローマ市民のDNA
平日夕方に訪問しました。19時近い到着でしたが、釣瓶落としの秋の日暮れはホントに早い。
そして夕方の最大メリット、人が少ない(笑)。悠々とローマ美術を堪能です。
「永遠の都ローマ展」は、世界的にもっとも古い美術館、イタリアのカピトリーノ美術館の所蔵を中心とした約70点の彫刻がメインの展覧会。
自分的には久々なヨーロピアン正統派美術の鑑賞となります。
目玉は古代ローマ彫刻の傑作《カピトリーノのヴィーナス※東京会場限定》なのですが、それも含めて今回の展示は総じて言うと【とにかく彫刻】!
色々妄想拡がりましたので、その魅力を会場順に独断でピックします。
第1章「ローマ建国神話の創造」➡《カピトリーノの牝狼》※複製 ブロンズ
会場入ってすぐ、待ち構えてるかのような存在感のブロンズ像。
装飾的なクルクル巻き毛の鬣が美しい牝狼からお乳をしゃぶろうとする赤ん坊は、双子男児ロムルスとレムス。
この赤ん坊が後に古代ローマ帝国を興すわけで、ファンタジーな設定はギリシャ神話とか日本神話とかを彷彿とさせます。
さらに後々、兄が弟を殺害するあたりは旧約聖書にも通じるな~という含蓄ある有名作品。
この狼の授乳シーンはローマの起源を示す象徴として、貨幣の皇帝面に対する裏面の模様に多用されてます。
展示にもコインがあり、精緻や簡易の落差はあっても狼と双子が刻まれていました。【始まり】という言わば定点を感じる作品。
第2章「古代ローマ帝国の栄光」1F➡《彫刻群10点以上》ほぼ大理石
正直言うと、ビーナスより狼ブロンズより古代史を肌感覚で感じたのがこの彫刻群でした。
理由は精巧すぎるくらい精巧な顔の再現度。皺とか特徴的な鼻の形とか、年齢も分かるほどに忠実なモンタージュ写真のような彫像たち。
歴史上の人物がどんな顔なのか、残念ながら日本は写真が輸入されるまで「たぶん、大体こんな顔」というレベルが一般的。
平安時代は全部引目鉤鼻表現で没個性だし、最も有名な藤原道長の顔でも多分予想不可能でしょう。
栄華を極めたので肌ツヤは良さそうな気もしますけど。
近代に製作した上野の西郷さん銅像さえ身内証言で「え・・似てない」とか言われているのです。
しかし古代ローマの彫刻は本当にリアル。そしてやたらと既視感(デジャヴュ)があるのです。
彫刻女性とそっくり同じ顔のカフェ店ウェイターのお姉さんをどっかのイタリア紀行番組で見た気がするし、強面なカラカラ帝はギリシャあたりのレスリングか柔道選手にほぼ同じ顔を見たような・・・という、同じ時間軸の存在を感じてしまいます。
子孫だから当たり前なのですが、今地中海沿岸で生きている人々のご先祖のDNAがとても身近に感じられてちょっと羨ましくなります。
この他の超巨大な展示品《コンスタンティヌス帝の巨象の頭部※複製》とか《 〃 の巨象の足※複製》もホントに大きくて圧巻です。
頭だけでワンボックスカー並みの大きさ。
本展目玉、2階上がってすぐの《カピトリーノのヴィーナス》も評判通りの美女ぶり。
《ミロのヴィーナス》に並ぶ傑作というのも頷けます。女性らしいS字曲線と美乳。
美麗さについては他の皆様からコメント挙げられてますのでこのへんで割愛します。
第3章「美術館の誕生からミケランジェロによる広場構想」➡教皇グレゴリウス9世の肖像モザイク 石・ガラス
ヴィーナスのお隣に展示されていたモザイクの人物画(抜粋)。作品劣化の少ないモザイク好きなのでこれもイチオシ作品です。
イタリアでは5世紀~13世紀頃まで、教会を彩るビザンチンモザイクが多く教会を飾ったので、これもそのひとつでしょう。
彩色した石の配置や陽の光に輝くモザイクがとにかく素敵。こうした教会のモザイク画は多くが天井近い壁とか屋根の内側とか、遠くにしか見られないので至近距離は眼福です。
第4章「絵画館コレクション」
16~18世紀の作品が多く、特に聖人や聖母子、歴代の教皇肖像画が並びます。
ルネサンス⇒バロック期に先駆けるカラヴァッジョ本人の作では無いですが、彼の影響の色濃い《メロンを持つ若者【嗅覚】の寓意》やどことなく現在の某事務総長に面影を見出す《教皇ベネディクトゥス14世肖像》など、歴史とラテンDNAを感じる良品が並んでいます。
第5章「芸術の都ローマへの憧れ─空想と現実のあわい 」
唯一の撮影可能コーナーがありました。トラヤヌス帝記念柱からの石膏複製(部分)です。
《モエシアの艦隊(モエシア=今のブルガリア周辺)》と《デケバルスの自殺(ローマに敵対した王様)》。
皇帝の記念柱なので、その成果というか功績を讃える内容なので大体勇ましいテーマですが、彫刻はやはり見事ですね。
そんなこんなで歴史テーマの展示内容がやや硬めでしたが、グッズ売り場はパロディやキャラクターコラボで緩く明るい雰囲気。
某古代ローマ銭湯漫画を意識した皇帝印の銭湯タオルとか、サンリオキャラモザイク版とか、ついついとお財布の紐も緩んでいく・・・(笑)
コロナに続く円安の昨今、遠のいた異国情緒と古代ローマの歴史を感じる機会となるローマ展、推奨です。
次回の巡回展は福岡市美術館にて2024年1月5日〜3月10日予定です。
関西以南の皆様ご検討ください。
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