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開館25周年記念展Ⅰ「愛し、恋し、江戸絵画 ―若冲・北斎・江戸琳派―」

開館25周年記念展Ⅰ「愛し、恋し、江戸絵画 ―若冲・北斎・江戸琳派―」

細見美術館|京都府

開催期間:

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《耳神様》「美術は耳で買うたらあかんのや、眼で買うもんや」

タイトルは、細見美25周年記念のチラシの中「漫画で読む 細見古香庵物語」で紹介された初代のエピソードとその顛末にある言葉です。吹き出してしまう内容ですが、但馬の田舎から出てきて一代にして財を成した実業家にはアルアルのお話のような気がしました。
「人間は欲をかくと眼が見えなくなってしまう」という細見家の教訓。

細見美術館は、初代古香庵に始まった細見家三代にわたる日本美術約1000点を所蔵する美術館です。初代は、仏教美術や茶の湯釜などの金工品や根来などの漆器を蒐集し、平安から桃山などの古い時代のものが多い。一方、細見美と言えばの「若冲」や「琳派」の作品は、二代が昭和40年代から昭和50年代にかけて積極的に蒐集したのだそうです。(先見の明があった!)本展Ⅰ期は、その二代夫妻が蒐集した江戸絵画を中心に紹介する展覧会となっています。
最近では、現代美術作家・杉本博司の細見美所蔵作品と杉本所蔵作品を杉本ならではの審美眼による取合せの展示や染織史家・吉岡幸雄の展覧会が「あぁいい展覧会だったなぁ」と記憶に残っています。

開館当時は、日本美術への関心もそう高くなく、美術館へ出向く人も限られていたのかもと勝手に推察しております。ところが、「ワカオキって誰?」から始まった(これは展覧会を担当された狩野先生から直に伺ったお話)2000年京博の「没後200年 伊藤若冲」展は、”若冲”を日本中に知らしめることとなり、(辻惟雄先生「奇想の系譜」は1970年には出ていたのですけど、やはりNHKの日美で放送され、反響の大きさに次々と関連番組が放送されることになる)これをきっかけとする「若冲ブーム」にのっかり、細見美は若冲コレクションの美術館として一躍注目を集めることとなり、さらには江戸琳派コレクションの美術館としても人気となって行きます。
初めて私が細見美を訪れたのはいつ頃だったか定かでないが、阪神間に戻ってきて数年が経ち、下に降りていく感じ1階にカフェがある感じは、大好きだった渋谷の東急文化村を思いました。まぁ。全然違ってましたけど・・・

細見美が所蔵する若冲作品は、屏風3双を含めて19件だそうです。繰り返し同じ作品を観るなぁと思っていました。しかしその19件で若冲の各時代をカバーできるコレクションとなっています(拍手)
北斎のいい作品も展示がありました。現館長は北斎がお好きとのこと、しかし北斎は世界レベルの知名度とあってお高い!「浮世絵展」って、同じような版画(サイズ的にもだと思います)が並んでいて飽きるんですよねとのお話。まさにまさに私もそう感じていました。そこに1枚でも北斎の肉筆はあると一気にその場の空気がかわる。心の中で強く同意しました。細見美は北斎の版画は1枚もお持ちでないそうで、全て肉筆!それも凄い。大阪市美蔵 北斎筆《潮干狩図》細見美旧蔵作品だそうです。二等辺三角形の構図の《五美人図》も良いですが、後ろ姿が語る《夜鷹図》にグッときました。

上等の顔料を使った絵師として、光琳、若冲、抱一の三人をあげられました。若冲《雪中雄鶏図》をまえに、ドロッとした雪とジグザグの竹、この作品に京都感じますか?京都で生まれ育った絵師、錦の青物問屋の倅の若冲や京都の呉服商、雁金屋の三男の乾山に京風を感じますか?丹波の田舎から出てきた応挙や仁清はいかにも京都な感じですね。東京の京風ラーメンは薄味で東京の人は『こーんな薄味!』といわはるけど本場京都のラーメンはコッテリだそうです。京都で生まれ育ったアーティストはアヴァンギャルドなんだそうです。(面白い見解ですね) 細見さんも三代目ともなれば京都人ですが、財界人たちの「近代数寄者」にはとても入っていけずに、初代は必死に集め、古美術のことも勉強しはったんやと思います。山下裕二先生は、初代の古美術の買い方はそらーかなり大胆やったと聞いているとお話になっていたように思います。そこには、足立美術館の創始者も同じ感じが漂います。いずこも、初代はパワー、情熱が凄いですね。

抱一の《白蓮図》私は初めて見た時から「とろけるような」と虜になった作品です。モノクロの世界に雌蕊が金で引かれている所も観てほしいとのお話でした。姫路藩主・酒井忠以の弟であった抱一は、若い頃は吉原通い、依頼されても描かない、俳諧三昧。37歳で出家して酒井家を離れ、自由な立場の僧として後半生を送ったそうで、仏画も描きました。「描表装」は元来仏画の技法だそうです。絵と表具が一体化した作品が美しい。鈴木其一は、抱一の弟子にして家臣でしたが、抱一の死後、家禄を返上し、抱一から解放され、幕末にあって様々な絵をみて吸収して、独自の画風を突き進みました。「たらし込み」技法を思いっきり使った大胆で斬新な《朴に尾長鳥図》に足が止まります。

宗達なんかは京都に残ってないんですね、江戸琳派は京都にある逆転現象が起きています。とのお話もありましたけれど、それはどうなのでしょうか。
Ⅱ期「挑み、求めて、美の極致-みほとけ・根来・茶の湯釜」(11/14~)は、初代の蒐集が展示され楽しみです。★リピーター割引もあります。

茶室のある最上階から目の前の前田國男設計モダニズム建築の外観を残すロームシアター京都越しの東山を望むのはいかがでしょうか。秋の京都、また恐ろしく混みそうですけれど。

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