〈特別展〉芭蕉布―人間国宝・平良敏子と喜如嘉の手仕事―
大倉集古館|東京都
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伝統技術が現代に継がれた芭蕉布の世界を、目の前で堪能できる喜び
「実芭蕉(みばしょう)」と呼ばれるバナナの木と同じ仲間で、その実が食用には向かない「糸芭蕉(いとばしょう)」の木の繊維を糸にして織りあげる芭蕉布を取り上げた展覧会。
芭蕉布は、風通しが良く涼やかさのある夏の着物である。本展のタイトルにある喜如嘉は「きじょか」と読み、沖縄県北部の大宜味村(おおぎみそん)に位置する地名である。
戦後に滅びかけた伝統技術を復興し、現代につないだ功績で、人間国宝(重要無形文化財保持者)に認定されたのが、平良敏子さん、現在、101歳(1921年生まれ)である。
平良敏子さんが喜如嘉に設けた工房で紡がれた手仕事、70点の作品が紹介されている。「今時こんな美しい布はめったにないのです。いつ見てもこの布ばかりは本物です。」と、民藝運動の主唱者・柳宗悦は、著書「芭蕉布物語」の中で語っている。
芭蕉という木の繊維から紡がれる希少な糸から織られる着物や帯の持つ天然の風合いや、草木や実などの天然染料で染められた色見の美しさ、そこに施される絣柄のリズムなどが、得も言われぬ魅力をもって、迫ってくる。
芭蕉の糸を染めやすく、柔らかくするためのに、木灰汁(もくあく)で煮て精錬する工程を煮綛(ニーガシー)といい、平良敏子さんは、王朝時代に用いられていたこの工程を再生させた。そして、数字に強かった平良さんは、古典柄だけでなく、精緻な絣柄を発展させていく。
米寿祝と同様の発想で「米」の漢字を図案化した「八十八」柄や番匠(ばんしょう)といわれる大工が使う直角定規を図案化したものや、小鳥の絣柄などの定番の柄をさまざまに応用してオリジナルの柄を生み出したり、絣柄との組み合わせで、布の上に新しいリズムを生みだしていく。中でも小鳥の柄を応用して考案したツバメ柄について、柳宗悦らとともに民藝運動を推進したバーナード・リーチは「このツバメはまるで翔んでいるようだ」と感心したという。
琉球藍、車輪梅、福木、インド茜、相思樹といった天然の草木染による色味や、同じく沖縄の染の技法である紅型を施した文様など、多彩な表情を見せる芭蕉布の世界が現代に継承されて、堪能できることの喜びを感じられる展覧会である。
何よりも、着物が好きな人にとっては、まとってみたい憧れの夏の着物である。その涼やかさを目にも着心地にも堪能してみたいものである。
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