
神戸市立博物館開館40周年記念特別展 よみがえる川崎美術館 ―川崎正蔵が守り伝えた美への招待―
神戸市立博物館|兵庫県
開催期間: ~
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1つの大コレクションが散逸していくまで
内覧会に出かけてブログも書かせて頂きました。
京都や大阪と違って、神戸となると地元意識があって、思い入れも強い展覧会です。
(神戸市民ではありませんが、神戸ならなにかあっても六甲山と瀬戸内海を確認しながら歩いて帰ってくることができる)
「日本初の私立の美術館は神戸にあった!」ホント?が入口です。そんなこと聞いたことがない。
折しも今年は東博創立150周年ということで、日本の博物館・美術館史にも注目が集まっています。
の上に、私の大好物「近代数寄者」と同世代のコレクターのお話です。
本展の主人公は「川崎正蔵」、川崎造船所と神戸新聞社の創業者です。
正蔵の3人息子は早くに亡くなってしまい、迎えた養子も後を継ぐことを拒み、
彼の会社を引き継いだのは、同郷薩摩の「元勲」と呼ばれた松方正義の三男、松方幸次郎です。
そう上野にある西洋美術館建設の礎ともなった松方コレクションの人です。
神戸市博は、2016年に「松方コレクション展ー松方幸次郎の夢の軌跡」巡回なしの展覧会を開催しています。
そうして今回は満を持して「川崎正蔵コレクション」の展覧会、「川崎美術館」展開催となりました。
美術館開館時には、千数百もあったコレクションが、現在確認されているのはわずかに200件です。
美術館の経緯や、旧蔵品と現存する「陳列品目録」や作品を収蔵しているお箱の箱書きとの照合、応挙の障壁画と陳列品目録との照らし合わせと立体再現
地道な作業が続いたのではないだろうか。(美術館の他の仕事もこなしながら)
展覧会紹介ブログなのに、肝心の展示作品への言及が殆どないではないか!!
とのご批判もありそうなブログとなってしまいましが、
図録を読んでいるうちにすっかり川崎美術館側のヒトになってしまった感じで、
当時の展覧会の様子ややがてはコレクションが散逸し、美術館も、川崎家の御屋敷もなくなってしまう
というそちらに興味がドッと持っていかれてしまいました。
川崎正蔵は、この時代の「近代数寄者」のように「茶の湯」にのめり込むことはなかったようですね。
「茶会」を披いて、茶道具をうちうちで見せ合ってるのが嫌だったのか?「道具茶」に走るコレクションが嫌だったのか?
造船業と新聞社という家業から目は外に向いていたのか?
お屋敷内には茶室は当然のことのようにあったみたいで、そこで接待もしていたみたいですけれど。
川崎正蔵の古美術収集には多分に憧れの松方正義の影響を受けていると思います。
そうして、松方幸次郎西洋美術蒐集には、川崎正蔵の美術品へあり方が大きく影響していたと思いました。
金融恐慌で松方幸次郎の美術館建設の夢も実現することなく、コレクションも散逸しました。
京都鹿ケ谷にある泉屋博古館には、住友家の神戸須磨にあった別邸の模型があります。
現在その地には、スマスイ(須磨水族館)が建っています。
そこはまるで邸宅美術館のようだったと泉屋さんの展覧会で知りました。
神戸の空襲で焼失し、京都へ疎開していた作品だけが辛うじて生き残りました。
神戸は、昭和の大水害、戦火、そして阪神大震災と大きな災害が3度もあり、そのたびごとに壊滅的な状態となりました。
あのまま美術館が存続しても、旧蔵品たちが現在まで守られて来たかは・・・
せめて少しは展示作品についても、言及したいと思います。
そうこの時代の人たちは、とにかく海外へ日本にある古美術の流出を阻止するのが急務、自分の使命ぐらいな思いもあって
コレクションの幅は広いです。東山御物、応挙、探幽がお好きだったのに、こーんなのもちゃんとお持ちだったのねの
①肉筆浮世絵 鳥文斎栄之筆「円窓九美人図」丸窓の中に9人の美人を描き分けている。構図もにくいし、色も美しい。
②南画 与謝蕪村筆「 闇夜漁舟図 」「雪景山水図」対幅の蕪村がとってもいい。家の窓から洩れる光の描き方とか、「夜色楼台図」を思い出します。
南画ではないですが、蕪村にも学んだ四条派呉春筆『三十六歌仙偃息図巻』共に逸翁美術館蔵で、蕪村、呉春がお好きだった逸翁さんの所へ落ち着いて本当に良かったと思いました。
③伝雪村筆「観音拝宝塔図 」雪村もお持ちだったのかとの思いと、この波の感じ雪村ですよねーが感想です。2017年「雪村展」@MIHO美に出てましたっけ?
番外、文化庁蔵「韃靼人狩猟図屛風」も良かったですし、根津美蔵「桜下蹴鞠図屏風」は、宗達筆ではないらしいですが、宗達周辺で描かれたとあり、構図も良いし、着物の絵柄も良い。そこここに宗達っぽくってええ感じです。
後期には、「名誉の屏風」狩野孝信、探幽の親子饗宴!同じおめでたい画題での二人の描き分けが観られるのが楽しみです。図録で見る限り、探幽は余白を生かした瀟洒端麗な感じでしょうか? MOA蔵「春日宮曼荼羅」も展示予定。宮曼荼羅までお持ちだったとは、ホントコレクションの幅が広い!
他地域の人にとっては三都市みたいな感じかもしれませんが、神戸と大阪と京都では街は全く違っています。それぞれが個性豊か!
神戸市博のある旧居留地も川崎美術館のあったちょっと下の北野あたりも素敵な所なので是非この機会に神戸にも寄って頂きたい。
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- BY morinousagisan