STARS展:現代美術のスターたち―日本から世界へ
森美術館|東京都
開催期間: ~
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アート界の6人のSTARたちのパワーが凝縮
充実した内容で見応えがあったこの展覧会に出展のSTARSとは、村上 隆、李禹煥(リ・ウファン)、草間彌生、宮島達男、杉本博司、奈良美智の6人でした。ごく短く、その特徴となるキーワードを(自分なりに)並べてみると、
村上隆・・・ポップアーティスト・エロポップ・アニメポップ
李禹煥・・・もの派・関係項・東洋思想・西洋哲学
草間彌生・・・前衛芸術家・水玉模様・網目模様
宮島達男・・・デジタル・カウンター・視覚芸術
杉本博司・・・哲学的写真家
奈良美智・・・ポップアーティスト・女の子・犬
といったところでしょうか。
今回の展示では、世界的に評価の高い彼らの軌跡を、初期作品と最新作を中心に紹介しており、各作家の代表的な作品が一堂に観られるという、貴重な機会となっています。
それにしても最初の展示室のインパクトが凄すぎるのです。
村上隆のあの有名な「マイ・ロンサム・カウボーイ」や「Ko²ちゃん」などの人気の等身大フィギュアのほか、巨大な阿吽像や壁一面の壁画に映像作品まで、展示室全体を占める村上隆作品の存在感が、圧倒的過ぎて、もうさすが!としかいいようがありません。
これは展示されているアート作品の存在以上に、村上隆氏のロックな魂というか、オタク的だけど、ロックなものを感じさせるエネルギーが、観る者を圧倒させるのかもしれません。
その次に現れる、李禹煥(リ・ウファン)の作品には、村上隆の作品とのギャップが大きくて、思索を迫られるというか、自分が何のためにここにいるのか一瞬忘れるほどの、別世界へのワープでした。
座禅して瞑想したくなるような李禹煥の展示空間にひたるには、村上隆の展示作品を見た興奮を少し冷ます時間が必要です。石庭のような足元をゆっくり歩きながら心を安らげて、静かにじっくり作品と対峙して欲しい2つ目の展示室でした。
草間彌生の展示では、初期の「ソフト・スカルプチュア」といわれる布製の突起物に埋め尽くされた作品から、最新の絵画シリーズの「わが永遠の魂」まで、代表作の数々が見られます。草間彌生が好きな方は、物足りないかもしれないけれど、最新シリーズから漏れ出てくる草間彌生さんの愛と、鏡と光を用いて小さなお部屋にめくるめく世界を展開させる「Infinity Mirrored Room」のインスタレーションをひとしきり眺めて、胸いっぱいになって、次の展示室に移ります。
宮島達男の作品といえば、六本木の街中で、原美術館で、デザインあ展で・・・あちこちでわたしたちはデジタル・カウンターを目にしているのではないでしょうか。「Sea of Time」という代表作も見られます。作品はすべて「0」はなく、1から9までで構成されています。LEDを用いて点滅する数字は、何を伝えようとしているのでしょうか。わたしたちが生まれたときから付き合ってきた、誰もにひとしく刻む時計の時間とは違うリズムの点滅に、なにか忘れ物をしているような、大事なものを思い出さないともったいないような、立ち止まらせる力に引き寄せられながら、わたしは、時間の海(「Sea of Time」)を眺めるのでした。
杉本博司の写真作品の唯一無二感がすごいです。このような写真をほかに誰が撮るのでしょうか?一般的な概念の写真とは程遠い、写真の技法を用いた、美術作品なのだと思いますが、深淵すぎて、簡単には掘り下げられません。ただただ美しい、宇宙的、壮大、哲学的、悠久、宗教的、といった芸術を超えていきそうなその向かう先にいざなってほしい、ずっと触れていたい芸術世界です。
最後の展示室は、奈良美智。このバラエティーに富んだ世界的な芸術家たちの最後を締めくくる展示は、ポッッップ!!杉本博司さんの作品にも出てきた「月」つながりの奈良美智さんの「月」は女の子の顔して、夜空にぽっかりと浮かんでいて、きゅんきゅんするではないですか!「Voyage of the Moon」という作品は、小屋のような愛らしい小さなお部屋に音楽が流れていて、部屋には、おもちゃや紙やペンやぬいぐるみなどが自由放題に点在しています。おままごとのような、子どもの秘密基地のような世界に、大人になってもきゅんきゅんしてしまうのだなと思いつつ、童心に帰りながら楽しんだ展示でした。
6人のSTARS、というコンセプトの展示は、6人それぞれ、異なる空気感・温度感があり、観るテンションがだいぶ変わりますが、展示全体を通して観てみると、思いのほか、満足度の高いものでした。