阪神・淡路大震災30年 大ゴッホ展 夜のカフェテラス
神戸市立博物館|兵庫県
開催期間: ~
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展覧会に非ず 【解説編】
神戸市博の大ゴッホ展に行って、あまりにヒドイその見せ方に怒り心頭に発し、旅先でスマホからAAに寸評書いた。
1週間が経った今も憤りは収まらないので、もうちょい詳しく書いておく。
訪問は9月末の平日午後。まあ、混むのは覚悟していたので入場してからの人混みは想定範囲内。
前半の初期作品から中期へと時系列で展示が為され、ところどころでは人のカタマリもできてたが、鑑賞に支障があると言うほどでもなかった。
何より、目ぼしい作品の解説キャプションとして、「ゴッホの手紙」からの引用があったのが嬉しかった。
ああ、これを描いたとき、そんなことをゴッホは思ってたのかと、自宅にある岩波文庫を再読してみようと思った。
会場は3階から2階へと続き、パリからいよいよアルルだなと最終章の作品に否が応でも期待は高まった。
そして、いきなりの《夜のカフェテラス》展示ときた。10m四方くらいに狭く仕切られたその展示スペースは超満員で、身動きも取れないくらい。
整列用のポール&バンドも立っていて、行列ができている。ところがそれは絵を見る順番ではなく、なんと、最前列で写真撮影するための行列だった。
スタッフが声を張り上げる。「最前列は写真撮影専用の列です。見るかたは右斜め後方からとなります。」だと。アンチ写真派の私は仕方なくそちらへ移動するしかない。
その「見る人」の位置は絵から2~3mも離れていて、おまけに斜めからなのでもはや鑑賞位置とは呼べない。
そこから絵の前を眺めると、世にも奇妙な光景が展開されている。撮影順番が来た客は絵を鑑賞する猶予もなく、即座にスマホ構えてシャッターを1回押したら、押し出されるようにその場を離れていく。まるでベルトコンベアの流れ作業だ。
撮影時間は2~3秒。それが撮影者に与えられた時間だ。スタッフも大声で「撮影したらすぐに離れろ」と催促の嵐だ。
こんな見せ方がかつてあったろうか?
展覧会とは何なのか?
絵を観る会じゃないのか?
とんでもない勘違いを神戸市博は犯してしまった。だから私は、先に投稿した寸評に「展覧会に非ず」と書いた。
狂気の沙汰は、夜カフェの後に並ぶ後期作品へと続く。すなわちそれら全てが撮影可であり、絵の前には一直線に撮影者列ができている。
その先頭と絵の間に人が入れる隙間はないに等しいので、撮影者を無視して絵の前に立つことも叶わない。
こっちの列は館の指示ではないので、ほんとは撮影者の前に出て絵を観たかったが、私にはそんな厚かましさはない。そんな雰囲気じゃなかったし。
まあとにかく、前代未聞の撮影者優先イベントに呆れかえって、早々に会場を出た。
美術展に本格的に行き始めて40年近くになるが、鑑賞者を無視した展覧会はこれが初めてだ。
何でこんな馬鹿げた展示をしたのか? 神戸市博は血迷ったとしか思えない。
思えば、この美術館は過去の展覧会でも写真撮影者向けに撮影フリー時間帯を設けたことがあった。
私はその展覧会には行ってないが、大方の予想通り著名作品の前には、一眼レフカメラを構えてその場から動かない客が出現したとの投稿もあった。
でもまだ、そっちの策のほうがましだ。事前に撮影可能時間帯を指定し、しっかり告知さえしておけばよいだけで、私みたいなアンチ撮影派にはそのほうがよっぽどありがたい。その時間帯に行かなきゃよいだけだから。そうすれば、撮影させろ派と、やめてくれ派との棲み分けもできるってこと。
聞くところによると、この反対をやった美術館が現れたそう。すなわち、1日1時間の静寂時間帯なるものを設けたサントリー美術館。
当然、シャッター音の鳴り響くスマホ撮影なんて禁止ってことになる。サイレンスタイム以外では、ワイワイガヤガヤ、スマホバシャバシャのノイズだらけの鑑賞がお咎めなしってことだ。
これは本末転倒。逆でしょ逆。1日1時間の撮影可能時間帯を作ってこその、撮影派&反撮影派の共存でしょうに。
大ゴッホ展は、この後福島県美へ巡回し、その後は上野の森美術館だ。
とにかく、両館ともに神戸市博を反面教師として、「絵を観れない展覧会」になることだけは避けてほしい。