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初心者にもキャプションがとても分かりやすく、見どころ満点
今展、私は昨秋の三井記念美術館「ガンダーラから日本へ」/五島美術館 「古裂賞玩 」/根津美術館 「百草蒔絵薬箪笥と飯塚桃葉」の3館3展チケット半券にて、日時予約のみで無料入館させていただきました。このキャンペーンはいつも利用させて頂くのですが、とてもありがたいです。
正直、私は書はちょっと苦手です。今展「古筆切」は勝手ながらあまり一般うけのしないテーマと思っていましたが、思いの外「通」の方々が多くいらっしゃるものと、少し驚きました。平日午前ながらとてもにぎわっていました。年配の方もお若い方も、海外からの方も結構いらしていました。室町時代以降茶の湯の流行や鑑賞に、優れた筆跡による歌集が一紙や一頁、数行単位で切断・分割された古筆切が用いられるようになり、更に桃山時代から古筆切を集めた手鑑も流行ったそうですね。展覧会自体、美しい文字と、字配りのバランスの美と、料紙の美しさとを、それなりには楽しませていただきました。初公開となった重要文化財で仮名で書かれた古筆の最高峰といわれる「高野切」をはじめ、平安から鎌倉時代にかけて書かれた、館蔵の古筆切が紹介されていて、なかなかにボリュームもありました。キャプションも分かりやすくてとても良かったです。再び観ることはないかもと思われる「高野切」の、雲母砂子の美しい料紙に流れる様に配された軽快な筆線は、とても素敵でした。もともとの形状では、ごく少人数しか実際に見ることができないものを「切」とすることで、茶会などの場でより多くの人と「わかちあう」ことができ、現代までも大切に伝えられたのだ、ということは分かります。でも私は、申し訳ないことに、手紙や物語巻物や写本や和歌の書を、名筆だからと言って切断して愛でるという感性に、未だに納得が行っていません。「切」は文字や料紙の美はそのまま伝え残されても、文字や言葉や書くということの中に込められたものを伝え残せないように思ってしまうのです。



