5.0
世界に広がる印象派
日本で大変人気のある印象派ですが、その中でもアメリカ印象派に焦点を当てた展覧会は珍しいのではないでしょうか。モネやルノワールら著名な画家たちの作品とともに、アメリカで独自の発展を遂げた印象派を楽しむことができる充実の展覧会でした。東京富士美術館の会場では、入ってすぐモネの睡蓮が揺らめくように映し出された「睡蓮の間」があり、一気に印象派の世界に引き込まれます。何と全作品撮影可能。無料の音声ガイドが提供されているのでイヤホンの持参をお忘れなく。平日ということもありゆったりと鑑賞することができ、鮮やかな色彩や力強い筆致を心ゆくまで堪能しました。眩い光の表現は圧巻の一言。章ごとに変化していく壁の色や照明といった室内全体の雰囲気が、作品と調和していてとても心地よい展示空間でした。黒田清輝ら日本人画家の作品もあり、印象派が世界にもたらした影響の大きさを実感します。印象派画家たちがジャポニスムに刺激を受けていたことを踏まえるとある意味逆輸入とも言えるかもしれません。フランス印象派とアメリカ印象派の違いは主にモチーフにあるとされますが、当時歴史の浅かったかの地で彼らが「アメリカ的な主題」を選んだことに、切実さと誇りを感じました。会期も残りわずかではありますが、海の向こうで育まれた新しい印象派、その豊かな表現をぜひ味わってほしいと思います。常設展も素晴らしいコレクションばかり、本展と関連のある作品も展示されているので必見です。