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大流行した着物 “銘仙”が大集合!着物好きやデザイン好きには、とても楽しい展覧会です。
着物は大好き、なのですが、今はもう全く浴衣くらいしか着ません。でも着物の柄や生地には思いが強いので、私の着物はよくワンビーやチュニックや小物入れなんかに姿を変えています。
大正ロマンの時代は過ぎて、戦時色に傾く時代の娘だった母の、整理をする箪笥から何枚も出て来た銘仙の着物。母曰く、絹は絹でも、くず繭を使って織っているので、また柄は色々でも平織りで、だから安価なのだと。でもその艶と軽い着心地の良さはちゃんと「絹」でした。物資のない時代に年頃の娘の普段着は綿のつぎはぎ、銘仙はおしゃれ着の部類だった。百貨店の広告や雑誌で見る装いには程遠くも、色は地味目でも、せいいっぱいのおしゃれを、頑張ろうとした、母の若かりし頃を思いました。また、何となく斬新なデザインが、当時高校生だった私の目をも引きました。
大正から昭和初期、“銘仙”は女学生を中心に大流行し、現代の着物にはない斬新な色柄が多く、見る者、纏う者、その全ての人々の心を魅了させ、各百貨店は新作銘仙を販売することで売り上げを伸ばし、百貨店が富裕層のものから、中産階級まで間口を広げる起爆剤ともなりました。でも、昭和30年代には洋装が広く定着したことから、ほぼ銘仙の生産は中止となってしまいました。それが2000年頃のアンティーク着物ブームで再注目され、その魅力が広く知られるようになり、現代では、日本のモダンデザインのひとつとして、海外の国立美術館がコレクションするほどなのだそうです。
この展覧会で展示されていたものは、銘仙蒐集家・研究家である桐生正子氏の約600点のコレクションから選び抜いた約60点が紹介されていて、母の箪笥の銘仙とは全く違っていて、とても華やかで魅力的でした。ポスターや雑誌にも見え、まさに若い女性に憧れられるイメージです。着物スタイリストの大野らふ氏による当時を再現した、帯締め帯留め、下駄にバッグにパラソル、アクセサリー小物などのコーディネートも必見です。大正のレディたちが歩くランウェイを見るような会場でした。更に銘仙の工夫も学べて、なかなか楽しくためにもなる展覧会でした。