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時代の転換期が生み出した「破格の造形」に驚嘆
三重県の伊賀地方では、遥か400万年前、古琵琶湖の時代に花崗岩が風化し湖底に堆積してできた亜炭等を含む陶土と、その周辺に広がる赤松などの燃料となる緑の森が、土と炎の芸術「伊賀焼」を育みました。そんな伊賀焼の中で、主に桃山から江戸時代に焼かれたものが「古伊賀」と呼ばれているようです。「山道手」といわれるヘラなどによる押し型文様、ゆがみ、緑色のビードロ、灰かぶりや焦げ、鉄釉を垂らす、山割れなどといった、個性的で作為性の強い造形と、窯中で偶然に生まれる景色があいまって、破調の美を生み、茶の湯の世界で特に高く評価されました。日本陶磁の最高峰とまで言われているそうです。茶道を嗜まない私には正直、ちょっととっつきにくい焼き物です。今展は、日本各地の美術館から、更に個人蔵まで、本当に「古伊賀」のみ90点以上を集めての展示で、ずらり並んだその様相は、よくまあここまでと驚かずにはいられません。もともと堂々とした風格を感じさせる焼き物ですから、何とも圧倒されてしまいました。歴史のロマンと共に謎の焼き物を堪能でき、なかなかに面白い展覧会でした。ただ、写真だけでなく、出来れば壁際に背面が見える鏡を置いて頂けたら、もっと良かったと思います。