4.0
いつもながらに、松岡翁蒐集のレベルの高い東洋の美を堪能できます。
松岡美術館さんは、落ち着いた静かな美術館でゆったり鑑賞出来ます。常設も企画展も、いつもなかなか好みの展示が多く大好きな美術館です。「ミニパンフレット」があったり、スマホで「ポケット学芸員」があったりもします。
今展は、館蔵の清朝玉器の中から、台湾 國立故宮博物院の《翠玉白菜》に通ずる超絶技巧を堪能できる《翡翠白菜形花瓶》とともに、古代中国の青銅器にあらわされた饕餮とうてつ文や虁き鳳ほう文を彫り込んだ作品が集められ、清時代に高まった仿古の潮流を味わえる内容となっています。メイン《翡翠白菜形花瓶》。白菜は花嫁の清廉潔白を、キリギリスやイナゴなどの昆虫は子孫繁栄の願いをあらわすことから結婚の縁起物とされるそうです。白菜が花嫁の清廉潔白で昆虫は子孫繁栄、というのが、面白いというかなんとも言い難い感じです。同様に、白菜にキリギリスとイナゴが配された台湾の國立故宮博物院所蔵、有名な《翠玉白菜》は、かつて清朝末期の光緒帝の妃、瑾妃住まう永和宮に飾られており、嫁入り道具だったそうです。実は台湾の故宮博で25年くらい前に一度現地で観ました。その後2014年トーハクでも観ています。白菜の色味は故宮博かも知れませんが、個人的には、全体の景色はこちらの《翡翠白菜形花瓶》の方が好きです。陶磁器では、世界に数点しか存在しない明時代初期の名品《青花龍唐草文天球瓶》や紅地粉彩花卉文扁壺《大清乾隆年製》も、他、堆朱なども観ごたえあります。中国絵画では館蔵の明清絵画より、今回は特に板倉聖哲東京大学東洋文化研究所教授による監修のもと画冊と画巻の優品を選りすぐり、前期に明代、後期に清代の作品が展観されていました。後期に行ったので一番の気に入りは、武丹《山水画冊》清 紙本墨画淡彩ですね。かなり充実内容で、中国の美術工芸の凄さを堪能しました。
同時開催の「昭和の日本画と洋画 松岡翁(1894-1989) 晩年の眼力」も良い内容でした。