企画展 うるしとともに ― くらしのなかの漆芸美 同時開催「受贈記念 伊万里・染付大皿の美」
泉屋博古館東京|東京都
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日本とアジアの漆器文化の高嶺を堪能。質・量ともに大満足です。
漆芸品が大好きな私としては、茶道具やら文具やらの優れた作品に出会えるだろうと、とても楽しみにしていました。その思いは少し、かわされた感じでした。
今展では、様々な場面で使用されてきた住友コレクションの漆芸品の数々から、その魅力が3つの展示室にわたって紹介されています。
第1展示室では、主に「食事」「宴」をテーマとした漆芸品が紹介されていました。《花鳥文蝋色蒔絵会席膳椀具》など、住友家の宴を彩った30人分(うち展示は5分の2)の懐石セットは、漆芸品ならではの艶の美しさはあるのですが、その量には思わず圧倒されました。あまり展示される機会がなかったというこれらを、出して拭って並べる、ただそれだけのにも相当の苦労があっただろう、などと…。それからこうした食器を用いた大宴会が、折に触れて開かれていたのかと思うと、住友家、やっぱけた違いにすごいですね。
第2展示室では、茶の湯や香道、能楽といった日本の伝統文化のなかで用いられてきた漆芸品が、シーンごとに紹介されていました。特に香炉や古典教養を背景とした組香で使用される札などは、とても小さな品にもかかわらず非常に細やかに意匠が描き出されています。その匠の技に感動します。”茶会”コーナーでは、信長の弟・織田有楽斎に千宗旦が送った書状と、書状に絵入りで言及された漆器の香合が展示されていました。サントリー美術館で開催の「大名茶人 織田有楽斎」展へも今度行きます。関連で予習の一つにもなったかもです。
第3展示室では、漆芸の彫漆や螺鈿、蒔絵などにおける様々な技法を切り口に、いずれも優れて細密高度な工芸品を紹介しています。素晴らしい、美しい、としか言いようがありません。書斎の漆芸美や贈る漆芸などと、展観されていました。
全体を通していつもの泉屋博古館さんの、丁寧でわかりやすく、楽しいキャプションも健在です。
王しか使えない五爪の龍を、下肢するにあたって? わざわざ爪の一か所を削り落として四爪にしたことが修復過程で分かったという《双龍図堆黄長方盆》には、こだわるのはそこですか、と思ってしまいます。
いずれにせよ、うるし工芸はただ見たままの美しさを愛でるだけでなく、螺鈿の色味の違いを選り分けて、使う場所を吟味して使ったり、盛ったり重ねたり削ったり似せたり、様々な巧みが施されていることを知り、更には古典や能楽などの広い知識がないと、春翠翁にお呼ばれしても、せっかくの設えの示す思いに気づけない、なんてことになってしまうのだろうと、ため息が出てしまいました。
今回は、近年に寄贈された「瀬川竹生コレクション」の優品『伊万里・染付大皿の美』も合わせて、初めて展示されていました。第3展示室後半と第4展示室にホールを使っての大公開です。ほぼ江戸後期の作品ですが、皿自体が驚くほど大きくて、とても美しくまた楽しく、そこに伝統や格式にとらわれない、自由な絵柄が描かれており、青と白の大迫力でした。今後も時々お会いしたいですね。
思っていたのとはずいぶん違っていましたが、結果、質・量ともに大満足の展覧会でした。平日の午前、とても空いていました。ゆっくり鑑賞出来ました。写真撮影は最初の第1展示室とロビーホールのみ可能でした。
うるしと言えば輪島塗、今回の震災復興支援募金箱も置かれていました。
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