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特別展「やまと絵 ‐受け継がれる王朝の美‐」

特別展「やまと絵 ‐受け継がれる王朝の美‐」

東京国立博物館|東京都

開催期間:

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メイド in ジャパン『やまと絵展』はラーメン!

先日終了してしまいましたが備忘録で掲載します。
落葉しまくりな11月半ばにようやく訪問のやまと絵展。
休日で予約制でしたが、大作揃いで鑑賞速度が遅くなりがちなせいか、どの作品の前もけっこうな人だかりでした。
国宝と重文がこれでもかと並び、小・中学校の歴史教科書で見たなコレという懐かしさと豪華さに目がチカチカしてくる展覧会。
2023年の大型展覧会の鑑賞としてはラストかな、と思いました。もう年末・・・・速い。

鑑賞した皆様にも言及が多いですが『やまと絵』という言葉・・・・
うーん……こう、コレだ!!という定義がしにくいというか、汎用性高いというか、フワフワな守備範囲の広いテーマです。

辞典参照すると【中国風の絵画の唐絵(からえ)に対する呼称であり、平安時代以来発達した日本風の絵画のことで日本絵画の分野のひとつ】とありますが、その時代によって定義が微妙に変化しているので、やっぱりなんだかフワフワと曖昧(笑)。
まあ、でもその曖昧さと良く言って懐の深さが日本らしいなとも思います。
ちなみにやまと絵展HPではやまと絵は【日本における伝統的画題・主題のこと】だそうです。
そして何故か謎の『カレー』推し(笑)。やまと絵という概念の守備範囲の広さをカレー料理の展開になぞらえています。

しかし、私としてはインド由来のカレーではなくて是非!中国由来のラーメンを推したい。
醤油・味噌・とんこつ・塩・汁なしと日本各地で花開くご当地ラーメンの数々。。。
それぞれがベストのラーメンを模索して創作追求するラーメン職人さん達の情熱。
そして美味しいラーメン屋をハシゴするのも厭わない、というかハシゴしたい日本人のラーメンへの愛は深さも広さも海レベル。

個人主張は置いておき、会場に視点を戻して見ると、やまと絵も平安時代以降の日本の絵師達がそれぞれに追求して描いた日本の美。
やまと絵=日本らしさってどんな部分なのかと言えば、例えば扇面に描かれる漢字が平仮名になることで書の雰囲気がグッと柔らかくなっていたり。
山水画に描かれる山が石灰岩特有の中国奇岩景勝地・桂林の高い山ではなくて、大文字焼きの五山のようななだらかな山になっていたり。
唐絵(中国)がベースだけど、そこかしこの大きくはない変化で【日本】を描いたとしっくり思える絵が表れています。
そんなメイド in ジャパンの中で今回の注目作をいくつかピック。

①日月四季山水図屛風じつげつしきさんすいずびょうぶ【国宝】 室町時代15世紀 金剛寺蔵

今回のお目当てのひとつ、初お目見えの六曲一双、巨大屏風です。
大阪南部の真言宗寺院 金剛寺の所蔵で、なかなか鑑賞機会に恵まれず今回東京まで来ていただいて大感謝としか言えません。
もっとも【国宝】に指定されたのが2018年と最近で、それまでに金剛寺以外に出品されたのは1989年という出品の腰の重さもありますが。
たまたま見たデジタル復元画像絵の鮮烈色彩に「実物見たい!」と思っていたので必見チェック(花丸)していました。
右側が春/夏の情景。中央にはこんもりとした緑の山々。右側の山には桜が点在して春を表し、左側の山の緑が濃ゆい。
山と山の間には金箔の太陽(日輪)が鈍く輝いています。
左側は秋/冬。うねうねと曲線著しい松林が広がり、背景には真っ白にもこもこ重なる主張の強い雪山。その向こうには銀箔が美しい三日月が。
どこか装飾的で現実離れした情景は理屈抜きで美しいです。
日本美術に造詣の深い随筆家の白洲正子氏が「私の一番好きな風景画」と言い切る作品も頷けます。
室町時代に制作されたこの屏風の作者は不詳で、密教で行われる灌頂(かんじょう)という儀式に使用する仏具の一つという屏風の用途から作者僧侶説がやや有力なくらい。作者も意図も色々不明で国宝は珍しいんじゃなかろうか。
松もですが、左右双曲の下部に描かれる海の波濤表現がありえない曲線をいくつも描いていて、この水表現の装飾性が現実離れした印象の大きな理由かなと思います。
今回マイベストな鑑賞推奨作品。

②平家納経 薬王菩薩本事品へいけのうきょう【国宝】 平安時代1164年奉納 厳島神社蔵
今回の展覧会は国宝だらけで目がチカチカしますが、日本の三大装飾経も今回3つ全て展示しています。豪華すぎ。
平家納経は独断注目作。平家一門が厳島神社に奉納した経典ですが、実物は金泥を散らした料紙に宮中装束の女性と蓮華の湖面に浮かぶ仏の絵がものすごく綺麗です。眼福。
平清盛が一門を隆盛させる平安時代末期には功徳を積む写経の風習が流行しましたが、なかでも法華経は女人成仏を説く点で、女性に人気があったそうで、この絵の華やかさ、女性像からも伺えます。
右下の女性が左上の仏を見上げる構図で、その間の蓮華の合間にに葦手字で「此命終」「安楽世界」といった文字が絵の一部のように書かれています。
葦手字というのは平安時代に流行したもので、河原に生えてる葦に見立てた字を下絵のなかに散りばめて溶け込ませる貴族の遊び心というか、アートな高等テクニック。
この絵では命を終えたら安楽世界に生まれ変わるという、納経のあらすじをタイトル的に表しています。

この他にも古今和歌集、和漢朗詠集、毎回人気の鳥獣戯画を会期分けて甲乙丙丁、歴史参考書の表紙頻出源氏物語絵巻とメイドinジャパンの大作ばかり、というか大作しかない展示が続き、ガン見し過ぎてドライアイ気味になったのか目をシパシパさせながら会場を後にしました。
会期は終了し、残念ながら巡回予定は無いようですが、1/4くらいの東博所有の作品は今後も見る機会はあるかもしれません。
また、全国に散るお目当て作品を求めての旅も素敵なのでは思わせる展覧会でした。

追記:ラーメン推しを提唱してましたが、グッズ売り場にはオリジナルカレーと同じ並びに展覧会オリジナルラーメンが並んでいました(笑)

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FUMITさん、karachanさん、morinousagisanさん、さいさん

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