野又 穫 Continuum 想像の語彙
東京オペラシティ アートギャラリー|東京都
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新世界より
美術展情報はほとんどネットで美術館HPや展覧会紹介サイト見て仕入れてる。
全く知らない作家でも、その作品見て電撃受ければ、もういてもたってもいられなくなる。
野又穫という人もそう。オペラシティAGのウェブサイト見て初めて知り、その作品に驚いた。
「現代アートでバベルの塔を描くとこうなるのか!」と。2023年7月上京のメインエベントは当展に決定した。
羽田に着いて、初台目指してまっしぐら。にしても、京王新線新宿駅への乗り換えはなんて遠いのか!
やっとオペラシティに着いたのが10時40分ごろ。開場して40分たってるな、客の入りはどうかなと、入口に来たら人が並んでる。
あれ?何で入場しないの?と思って開場時間を見たらなんと11時!
こんな重役出勤の美術館だったとはね。もっとゆっくり歩いて来るんだった。アホくさ。
入口周辺には座るとこないので、階下のソファでボーっと時間つぶして11時に再度上階へ。
私の前には10数人ぐらいかな。そんなに混んでなくてよかった。
会場に入れば、広い展示室の壁に間隔を十分あけて作品が並ぶ。キャプションはない。
野又さんが描く建造物は、いったい何なのか。皆さん、沈思黙考しそれを凝視している。
ハヤカワ文庫の表紙にでもなってそうな建物、塔、オブジェは異様であり威容でもある。
その役割や機能を考察してもせんなきことなのか。
しかし、その描写があまりにリアルでもあるがゆえに、この地球上のどこかには実在しているのではとも思えてくる。
あるいは、野又さんはタイムトラベラーで、未来へタイムワープして見て来たものを描いたのか。
等々、これらの作品群は見る者に解答不能な命題を投げかけている。
そう、「2001年宇宙の旅」に登場したモノリスみたいに。
展示の中盤あたりで、ついにバベルの塔が出現する。
《Babel 2005》と名付けられたその作品を細部まで観察すると、新たな発見がある。
塔の最上部あたりには足場が組んであり、まだ天に向かって建設中なこと。
外壁面のところどころに、ロシア語ともハングル語ともとれる奇妙な文字か掲げられていること。
塔周辺の地上にはテントが数多く張ってあり遊牧民か建設労働者が住んでそうだが人の姿は見えないこと。
まだまだ想像すればいくつでもありそうだ。
小学生にこの絵を見せて、お話を作りなさいと言えば、画期的かつ斬新なストーリーが続々と出てきそう。
この未来型バベルタワーには、バリエーションがいくつかあり会場内で遭遇可能だ。
エッシャーからのインスパイア建造物もある。
ただ、それらは「だまし絵」にはなってなく、よーく見ると不自然な箇所はなく光と影も正しく描かれている。
巨大風車や気球、さらには植物と合体した建造物しかり。いずれも、現代技術をもってすれば建造可能なのではなかろうか。
ただし、用途はない。
野又作品は、シリアスなのか、それともイグ・ノーベル賞アートなのか、果たしてどちらなのだろう。
私の妄想は、人類が滅亡した地球にやってきた異星人が廃墟から類推して、かつてはここにこんな建物があったのではと描いた絵だ。
繰り返しになるが、それが何であるかという問いは意味をなさない。
生命体が共存するのかどうかも。
ただ、この世界がどういう状況下にあるのか、暗示するような作品もある。《Imagine-1 2018》だ。
東京上空から西の方角を斜めに俯瞰した巨大パノラマが描かれている。
冠雪した富士山が美しい。山々の緑もあり、海は青い。平野部には縦横に道路が走り、都市も確かに存在する。
はるか上空からの俯瞰図なので、人や車の姿までは見えない。しかし、そこに人類がいるとは思えない。
バベルの塔を作った人間に神が与えた罰は言語を多数化したことだった。
野又ワールドでのバベルタワーが神への再挑戦だったとしたら、今度は人間の存在自体を消滅させることが神のジャッジだったのかもしれない。
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