憧憬の地 ブルターニュ ―モネ、ゴーガン、黒田清輝らが見た異郷
国立西洋美術館|東京都
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ブルターニュあれこれ
当展を見に来る前に、地図でブルターニュの位置を確認されたかた多くないですか?
その地名は耳にすることはあっても、フランスのどこかというだけで、正確な場所がわかる人ってそんなにいないのでは?
私はまさにそう。Google Mapで調べました(笑)なるほど、フランス北西部に盲腸みたいに突き出た半島部なのね。
日本で言うと能登半島ってとこかな。(違うか)
2023年春は、奇しくもこの地をテーマにした企画展が東京で二つ同時開催だ。
一つが西洋美、もう一つがSOMPO美だ。前者の開催初日に予約して行ってみた。
特定地方がテーマなので、まあ予想通りその地の風景、人々、出来事などを描いた絵ばかりだ。
出展作家は多様で、フランス人もいれば渡仏して当地まで足を伸ばした日本人画家もいる。展覧会タイトルが「憧憬の地」とあるように、皆さんこのフランスの能登半島がお好きだったみたい(笑)
ブルターニュには画家コミュニティがあったそうで、参加者の一人にゴーギャンがいる。当展にはそのときの作品が10点ぐらい出ていて、目玉でもある。当然、松方コレクション主体と思いきや、各地の著名美術館から来ているのが多くて感激。
《海辺に立つブルターニュの少女たち》は、当館常設展でおなじみだが、この絵は服を着たタヒチ人だととんでもない勘違いをしていた大バカ者(=私)もいるから、やはり勉強になります(笑)
勉強になるのは確かで、その絵がブルターニュの風景や人だと、どうしてわかるのかというのが私にとっては重要だった。
タイトルに地名があることが最も簡単。人の場合は、ブルターニュ人とかブルトンヌとかがあればすぐわかる。
そういうのが何もない場合、風景画はどこかがわからぬが、断崖がある海岸ならブルターニュだという暗黙の了解はあるのかもしれない。
女性を描いた絵は、民族衣装でわかるみたい。頭に白い布(コアフという)被ってエプロンしてる女性がそう。
最もわかりやすいのが、東近から来ていた山本鼎《ブルトンヌ》。これがブルターニュ女性の教科書だ。
この肖像さえ頭に叩き込んでおけば、今後は絵だけ見てその女性がブルターニュ人だと一発で判別できます(笑)
出展作品は、いろんな画家のいろんな絵があって、どれもその人の個性が良く出てたと思う。単純な私には、モーリス・ドニのカラフルな絵が最も印象に残ってるし、好みではある。
一方で、シャルル・コッテみたいに暗く悲しいテーマを取り上げた絵もまた、三方が海の当地ならではのものだろう。
この二人は会場中盤でコーナーを確保してしっかり見せてくれます。
アンリ・リヴィエールもちゃっかりここを描いている。
この画家を初見のかたは、浮世絵師がなんでフランス海岸を描いたのかと思うだろう。
さながら、仏海道五十三次みたいな(笑)
これも1コーナーありますので、お楽しみに。
日本人画家たちも、こぞってブルターニュ詣でをしている。
黒田清輝が明治20年代に訪れ、以後は当地へ赴く者は後を絶たず。大正時代に渡仏した日本人画家はほとんど来てそう。流行りだったのだろうか。
パリ以外でどこか観光兼ねてスケッチ旅行できるとこはなかろうかみたいな。地中海側は遠いから、もうちょい近場でと探したら、あったあったブルターニュ。黒田先生も来たぐらいだから、これはもう間違いなし。
で、来て見てびっくり。何もないやないかい。岩場の断崖なら東尋坊のほうが迫力あるし、田園風景は日本とたいして変わらんし。しゃあない、そのへんの牛と農婦と林檎の木でも描いとくか。
かくしてブルターニュは画家の間では、渡仏後の聖地巡礼SPOTとして定着したのでありました。
半分は私の勝手なブルターニュ像だけど、半分は当たらずとも遠からずじゃなかろうか。
とはいえ、岡鹿之助《信号台》や藤田嗣治《十字架の見える風景》といった白を基調の絵は日本では描けない作品で、こうした企画展で同時に見れる機会は貴重だと思う。
会場には当然のことながら、ブルターニュの地図パネルがあって、各作品の舞台である町や村、港や島、海岸などが逐一わかるようになっている。
「ナントの勅令」のナントって、なんとブルターニュにあったのか(笑)
地理や世界史の授業の記憶も懐かしくよみがえったりします。
異国の文化を知るってのは面白い。全く知らなかったことはもちろん、あのあれはここにあったのか、ここが発祥で名産だったのか、なんてのは特に。
私がブルターニュに行くことはないだろうけど、本場のクイニーアマンを食べてみたいと切に思う、今日この頃です。
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