ルーヴル美術館展 愛を描く
国立新美術館|東京都
開催期間: ~
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愛のふり幅は広くて沼。考察に浸るきっかけも愛。
休日の午後に予約して訪問しました。
予約時間のちょっと前に行きましたが、それでも入口前には長蛇の列、人気ですね。
時間潰しに展覧会鑑賞者のファッションチェック。
港区の場所柄か、ガールズコレクションでランウェイ歩いてそうな素敵ファッションやハイヒール婦人がちらほら。
流石(?)のクオリティへの感嘆と、ヒールって何だっけ?な自分の楽ちんファッションの落差に一瞬アンニュイな気分になりましたが、スムーズな案内で無事入場です。
入口正面の壁にはピンクのハート♡の中に、『ルーヴルには 愛がある』との格言が。
膨大な量を誇るルーブル美術館の展覧会、今回のテーマは時代や作家や様式ではなくて『愛』にまつわるエトセトラ。
------守備範囲の広いテーマです。
一般的な恋愛はもちろん、友愛、母性愛やキューピッド、有名どころ《かんぬき》等ロココ時代絵画については他にも感想やコメントがありましたので、私からは作品自体は推しですが、テーマが悲恋やバッドエンドなマイナー路線作品を数点ピックアップ。
①《アビドスの花嫁》
ウジェーヌ・ドラクロワ作 1852年35.5×27.5cm 油彩
展覧会全体についても言えますが、今回の展示作品群は予備知識が無いと正直魅力が半減、いえ7割くらいの減退です。
この絵も見たままの感想であれば『綺麗♡』で終わってしまうので、19世紀ロマン主義絵画の巨匠、『民衆を導く自由の女神』を描いたドラクロワの作品なのにスルーしていく鑑賞者がもの凄く多くてちょっと驚きました。しかも撮影可能コーナーなのに!おかげで遠慮なく撮影できましたが。
40cm未満の小作品ですが、完成度の高さが群を抜いていて目を引きます。スルーする方は多分気付いてないのでしょう。
周りの作品が2m以上の大型ですし、あとは主題がマイナーなこともあるかもですね。
作品は【事実は小説より奇なり】という名言が有名なイギリスのロマン派代表詩人、バイロンの長編詩が原作で、そこから引用しています。
オスマン帝国(現卜ルコ)の王朝を舞台にした悲恋で、兄妹での禁断の愛→実は従兄弟同士と発覚(しかも兄の実父が弟である叔父に殺され、実父を殺害した叔父の養子として育てられたというハードな内容)
→従兄妹同士だから結婚できる希望を持つ→結婚を許さない養父に兄は殺害される→絶望した妹も恋人の後追いで死亡。
・・・・もうハードすぎる昼ドラというかロミオとジュリエットのトルコ版というか。
とロミジュリを思い描いたら、すぐ近くにこれまたロマン派の巨匠、テオドール・シャセリオー《ロミオとジュリエット》1850年頃が。
これはもしや関連付けてる?でもきっと意図してたとしても伝わってない気がします。
解説では絵の場面は物語の後半、恋人同士の2人を引き離すべく妹の父親が追っ手を放ち、逃避行で追い詰められた兄が応戦しようとするのを妹が必死で縋る場面のようです。
岩に囲まれ、荒い波の音が周囲の音を搔き消す人気のない海岸。
悲鳴も荒波と風音に紛れて聞こえないであろう中で、追い詰められる恋人達の情景はサスペンスドラマの佳境を見る気分。
この後の物語の悲劇の結末も思い浮かび、ドラマチックな情景描写がドラクロワらしいと納得の作品です。
②《ダンテとウェルギリウスの前に現れたフランチェスカ・ダ・リミニとパオロ・マラテスタの亡霊》
アリ・シェフェール作 1855年 171 x 239 cm 油彩
2m越えの大画面で、白く浮かび上がる男女の裸体が目立ちます。これも撮影可能コーナーでした。
肖像画を得意としたフランスの画家、シェフェールの作品。
有名な14世紀イタリアの詩人ダンテの叙事詩『神曲』の「地獄篇」に登場するパオロとフランチェスカのこれまた悲恋を描いています。内容は典型的な政略結婚で嫁いだフランチェスカが夫の弟パオロと恋に落ち、夫に不倫現場を目撃されて殺害された後のお話。
キリスト教の教えでは、男女の愛憎(不倫とか)発端の死後、当事者は台風の暴風圏並みの爆風の中をひたすら漂う地獄世界に送られます。
なので、絵の情景も暴風に流され続ける2人を地獄ツアー中のダンテが見つめるシーン。
肖像画が得意なだけあって、ダンテの顔立ちがすごく分かりやすい。
亡霊2人は悲愴な表情ですが、生気の無い白い裸体は美しくて主題の陰鬱さを軽減しています。
どちらも作品を起点にした考察の伸びしろが大きくて、想像を逞しくしてしまうルーヴル展。
ロマン派の悲恋を思い描いたり、《かんぬき》にロココ時代のフランス恋愛・結婚事情をググってみたり、カトリックがメインの割にあまり信心深いイメージが少ない現代フランスに思い至ったり。
今も事実婚とか多いし、不倫に対しても大変寛容な自由の国フランス。
マクロン大統領夫妻の恋愛(20歳以上年の差で教師と学生ってもはやドラマ)も日本なら即スキャンダルですが、かの地では自然に迎合されているし、夫人も国民人気高いし。
恋愛に大らかというか懐が深いというか。。。気付けば芸術から今の欧米恋愛事情にまで夢想広がるルーヴル展。
【愛】のテーマはいろいろ深いわぁとしみじみ感じる展覧会でした。
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