マティス展
東京都美術館|東京都
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【色彩の魔術師】マティス・地に足ついたアートの足跡
仕事の後、夜間開館にてようやく訪問です。
来館30万人突破した大人気のマティス展。
とはいえ7月末の段階で閉館1時間前になると大分空いてます、参考までに。
迷路のように折り返す仕切りのポールそっちのけで会場入口へ直行。
ゴッホやルノワールと同様、日本人の【マティス】認知度はかなり高いなと思います。
明るい色彩の絵はリトグラフで壁に飾ったりとお洒落なインテリアパーツとして使われているので、世代問わずの高い好感度。
とはいえ大半の人が思い浮かべる作品は、「ダンス」とか「金魚」等、人生後半の代表作や切り絵。
今回の展覧会は人気の高い後期作品だけでなく、84年の生涯に寄り添い、その都度の思想や試行錯誤が見受けられて画風変遷の理由がストンと腑に落ちる展示内容がわかりみ深くて良いですね。
もともと画家志望ではなく、体調不良の手慰みにと絵筆を持ったらこれ(芸術)こそ自分の天命だ!とアートに邁進していくことになったマティス黎明~前半期。
ほぼ時系列に並ぶ展示を鑑賞していくと、丁寧で、かつ先達の影響がもの凄く分かりやすい作品が並びます。
どこか古典的なコローとか、静物画はセザンヌとか、点描のシニャックとか。
これはこの人を見本にしたんだなぁと、研鑽を着実に積み重ねたのが分かる初期作品群。
シニャック影響下と理論に基づいて描いた「豪奢、静寂、逸楽」はリスペクトしたシニャックご本人にお買い上げいただく出来栄えで、彼の吸収力の高さが伺えます。
周囲の画家達から受けたインスピレーションを自分の作品にて実践し、先達の芸術を踏襲する【温故知新】を地で往くマティス。
実生活では同時代の画家、ジョルジュ・ルオーに戦時下差し入れを贈ったり手紙で気遣ったりと人付き合いの良さと思いやりの人格が滲み出てますね。
ちなみにキュビズムの代表格ピカソとも生涯を通して仲良しで良きライバル関係だったとか。。。
ラテン系情熱家で女性と常にすったもんだしていた忙しないピカソとコツコツ蟻さん気質のマティスでは水と油な気もしますが、お互いに無い物に惹かれたのかもしれません。
あるいはピカソが対象を様々な視点からの輪郭線を重ねて「形を崩す」キュビズム提唱者だったように、マティスは当たり前に今見えている「色を壊す」フォーヴィズムという、”芸術の革新者”としての面では似た者同士とも言えるかも。
後半の展示にある【黄色と青の室内】や【赤の大きな室内】は現実を無視した真っ赤や真っ青な壁や床で、物<色の存在感がマティス独自の世界を主張してきます。
展示の最後にあるドミニコ会修道院ロザリオ礼拝堂のデザイン展示は、そんな温故知新で独自の境地に至ったマティスの「余計なものは要らない」と言わんばかりのアート集大成。
聖人と天使の顔は描かず見るものの感性に委ねて、白の壁に天上の青とカナリアイエローを基調にした清冽で鮮やかな色彩が美しいです。撮影画像解像度最新のせいもありますが。
周囲の鑑賞者している皆様からも聞こえた共通の感想ですが、『ここ行ってみたいわ~』と痛切に思いました。
そんなマティスの多才な世界を堪能できましたが、今回独断で出色に思えたのが彫刻です。
あんまりマティスの彫刻作品は意識してなかったのですが、一目で私の好みまっしぐらでしたw
連作になりますが【背中Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ】の4つの彫刻も具象→抽象への変化が分かりやすく面白いですね。
うつ伏せの人物が一列の横並びになっているのですが、お尻や肩甲骨の表現が現実の肉体の形から象徴的なカーブになり、受ける印象が生物→無機物へガラリと変化します。
小作品は大体暗色ブロンズのダークチョコカラーで、緻密な表現ではなく、伸びやかなポーズで肉感的、象徴的なフォルム。
【貝殻のヴィーナス】は特にイチ推しです。どこか原始的で木彫りのアフリカンアートや、青森の遮光器土偶を連想しました。
そしてなんというか、色のせいか妙に美味しそうに見えます。バナナチョコのよう。。。。
そんな連想をしていたら会場出口のグッズ売り場で、美味しそうな彫刻を具現化した商品を発見!!
マティス彫刻をオマージュしたカリン糖です。黒砂糖のツヤツヤしたフォルム、、、貝殻のヴィーナスを食べられるとは!と即買いしました。
他にもレモンケーキや紅茶、マティスの絵に出てきたキッチン雑貨等、グッズが充実していますので、お財布との相談をしつつのお愉しみを推奨します。巡回展情報を聞かないので、ぜひこの機会をお見逃しないように。。。
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