ボストン美術館所蔵 THE HEROES 刀剣×浮世絵―武者たちの物語
兵庫県立美術館|兵庫県
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安藤建築で楽しむ「血湧き肉躍る」武者絵と一級の刀剣
「刀剣」も「武者絵」もそれほど興味がない私で、今回はパスでもいいかなくらいに思ってました。
今回の展覧会で一番気になったのは、展示の仕方でした。人気を博した「怖い絵」展でのポール・ドラローシュ《レディ・ジェーン・グレイの処刑》やプラド美術館展でのベラスケスなどの大きな作品を展示してきた兵庫県美、天井の高い安藤建築に手元で楽しむ錦絵がどのように展示されるのだろうと思っていました。「ベルギー奇想の系譜展」での版画でさえ、多くの人が押し寄せると小さくてちゃんと見えなかったから。
しかしそれは杞憂でしかありませんでした。
「武者絵」と言われても、どんな場面が描かれているのかが分からない。
浮世絵には画面上にタイトルと時には解説もあり、登場人物にも札があり、字が読める昔の人はそれを読んで理解した以上に、画題となっているお話は誰も知っているものばかりで、絵をみればどんなお話かが分かったのではないでしょうか。
本展では、章ごとの解説はもちろんのこと、作品となった物語の内容解説と4コマ漫画のような簡単なイラストがついていました。次に展示される作品の内容がとてもよく分かる。作品によっては注目ポイントのコメントも添えられてありました。
平日の昼時に入った私、驚くほどに人が少なく(そう人気の展覧会でも昼食時は一度来館者が減る)鑑賞者側としてはとてもラッキーでした。
武者絵と並べて、共通のイメージがデザインされた鐔が展示されています。
小さな刀装具は、刀剣の所有者の遊び心とセンス、制作者の超絶技巧と意匠が際立ちます。この場面をこうきたかぁとその意匠の良さにうなったりして。
私の父は歴史好き、小学生の低学年の頃に子供用の「源平盛衰記」を父が夜な夜な読んでくれておりまして、その本の口絵「那須与一の扇を射る場面」や「義経の八艘飛び」「鵯越」などを繰り返し見ていたように思います。今回の武者絵には源平のお話も出てきて、私もどっぷりつかっている、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の場面や登場人物、役者さんともオーバーラップして、「あの場面だ!」とか「中村獅童さん」「中川大志君」「巴御前の眉は繋がってるのか?」「時政パパが」としても楽しむことが出来ました。
それにしても、刀剣も一級品が来日しているのに、2017年京博の『京(みやこ)のかたな 匠のわざと雅のこころ』に集った刀剣女子たちはどうした?かの展覧会には「刀剣女子」と呼ばれる若い女史がこぞってやってきて、その上その女子たちを目当てに来る人も居て、ちょっとした物議を醸した展覧会でした。彼女たちにとっては、「刀剣」が目的ではなく、キャラクターの元となった刀剣が目的だったのかしら。
本展では、刀剣だけを集めた展示室も用意され、鈍く光る刀剣が展示されていました。世界広しと言えども、武器に造形美を見出し、それも崇高ながあるのは日本の刀剣だけとのこと。しかし、一般人には鑑賞の仕方がイマイチ分からない。予算も違うのだろうけれど、京博の展覧会には「かたな鑑賞のポイント」なるリーフレットも用意されていました。刀剣の部位の名称だったり、刀剣鑑賞にある特別の用語の解説だったり、鑑賞のポイントをイラスト入りのパネル解説があっても良かったのではないでしょうか。もう1点展示場出てからDVDで展覧会紹介が流されていましたが、展示室入る前に、展示室の中にあれば尚良かったのではないでしょうか。
展覧会の公式サイトがとてもスグレモノです 武者絵のテーマとなっている解説はもちろんのこと、浮世絵や刀剣の細かい部分が拡大して視ることができるようになっています⇒ https://heroes.exhn.jp/exhibition_ukiyoe/
写真撮影もOKでしたので、1点1点解説もじっくり読んで拝見しまして、なーんと3時間以上も展示場に居たようです。
「血湧き肉躍る」武者絵の世界、やっぱり国芳ウマイなぁ。
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- BY morinousagisan