
特別展「ハリー・ポッターと魔法の歴史」
兵庫県立美術館|兵庫県
開催期間: ~
- VIEW781
- THANKS2
ハリー・ポッターとともに辿る魔法とその表現の歴史
本展は、大人気ファンタジー「ハリー・ポッター」シリーズの創作の源を歴史的・文化的観点から辿ることができる展覧会だ。魔術に関する資料や道具類など興味深い品々が展示されていて、あやしい雰囲気も漂っている。これらを見ていると、作者J.K.ローリングの類稀な想像力が生み出した魔法の世界やキャラクターたちは、ハリー・ポッターが書かれるよりずっと以前から続いてきた、魔法を信じ、それを表現しようとする人たちの軌跡の中に位置づいていることがわかるだろう。ファンタジーを求める人間の欲求と想像力はなんとすばらしいことかと思わされる。ある意味では非常に人類史的な展覧会ともいえるかもしれない。
展示構成はホグワーツ魔法魔術学校の科目を紐解く形をとっており、ローリング氏の原稿や本の挿絵とともに、大英図書館所蔵の貴重な歴史的資料などが紹介されている。私たちがよく知る映画ではなく原作を主軸としているため、映画の資料のようなものは展示されていないが(最後に舞台衣装の展示はある)、著者直筆の言葉やスケッチなどが見られるのは嬉しい。ジム・ケイの挿絵スケッチや原画は、奇想天外な魔法の世界が表現されていておもしろいのはもちろんだが、ローリング氏自身の思い描いたイメージスケッチもまた愛嬌があって良かった。
ただ、美術館の展示室が大きいせいでもあるだろうが、文書の展示が多いため全体的に物足りなさも感じた。「ハリー・ポッター」と「魔法の歴史」を並置すると、どちらも魅力的テーマであるために展示容量的に両者ともが薄まってしまっている感も否めなかった。ハリー・ポッター原作にまつわる展示としてはまたとない機会かもしれないが、なにせ章テーマ(魔術の種類)が多いため、魔法の歴史については、またそれとして展覧会が開催されてもよいのではないだろうかというような印象も受けた。
また展示室には装飾(箒やティーカップが天井から吊り下がっていたりする)が局所的に施されているが、それがあまりにもとってつけたエンタメ感のように見えてしまっていたり、展示壁に金のスニッチが飛び回る様子が投映されている演出もあるが、その羽音のせいで展示に集中できなかったり、個人的に残念な部分も少なからずあった。想像通りのハリー・ポッターの世界を展示室に再現しようとした工夫であったようにも思うが、展覧会で何を見たいか、学び取りたいかという点から考えると、鑑賞者によっては少し困惑してしまう展示でもあったように思う。
- THANKS!をクリックしたユーザー
- シンディさん、morinousagisanさん