セカイノコトワリ―私たちの時代の美術 #WhereDoWeStand? : Art in Our Time
京都国立近代美術館|京都府
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セカイの修復
1990年代から現代にかけて活躍してきた日本人アーティスト20名が、世界とどのように関わってきたのかを作品を通して見る展覧会。
国立国際美術館「ノー・バウンダリーズ」で展示されていたが、36分という上映時間に躊躇して鑑賞しなかった松井智恵「HIMARAYA-KAIDAN」と再会。今回は鑑賞することにする。だんだん映像作品に慣れてきた。
作者が部屋の中を這いながら移動するのを見て赤ちゃんを連想する。意志と行動の間に懸隔があって欲求が叶えられないのは想像できない苦痛なんだろうなと思う。
部屋を出て階段を這い降りる。腕を使い足を突っ張ってじわじわ降りていく。階段は真上から撮られている。加えて国立国際美術館の時は液晶画面で上映されていたが、今回はドアのある壁に映写されており、ドアによって映像が歪んで映るため更に階段が険しく見える。作者は髪が長いので、移動のとき引っかかって痛いだろうなと思う。階段を降りたらドアから建物の外に出る。暗転して事故の音が聞こえ、映像は終わる。
せっかくだから全部観ようと思って引き続き観ていると、作者が見覚えのあるドアから建物の中に這い入り、階段を這い上がっていく。そこからかよ! 私が観始めたのは折り返し地点からだった。作者が階段を這い上って行くうちにも、建物の外からずっと車の音がしている。ふと、知り合いの行動が遅い人のことを思い出す。はたから見ているともっと早く行動できないのかなと思うかもしれないが、その人はサボっているわけではない。階段を這い上って行くのもゆっくりのように見えるが無駄な動作はなく、全ての動作が階段を上る目的に供している。そしてその行動は外界の脅威に晒されながら行われているのだ。
西條茜「惑星」。チラシの紹介写真だと椅子のような大きな物体に3人の人が密着していて、物体を慈しんでいるような、お互いを気遣い合っているような様子に見えていたが、それは巨大な陶の開口部から息を吹き込んでいるところだった。
管のような開口部のある大きな陶の作品は臓器のように見えた。私たちの呼吸器もふだん空気が通っていて、全く意識していないがそれは大変な労力のような気がしてきた。巨大な陶に息を吹き込んでいる様子は、巨人の臓器を動かしているように見えた。
14時から藤本由紀夫氏、竹村京氏、毛利悠子氏のトークイベントが行われた。司会の人がテーマを振っていくのではなく、それぞれのアーティストが順番に話し、そこからお互いに話し合っていく形だったのにトークがダレることなく続いていったのはびっくりした。
展示室の入口にあった藤本氏の「ON THE EARTH」は、キューブが積み重ねてある作品だが、くっつけて固定されてあるわけでなく本当に積んであるだけだとか、「SUGAR Ⅰ」は瓶に角砂糖を入れて回転させている作品だが、30年間角砂糖は崩れ切らずに残り続けていることとかが聞けて面白かった。
そして今回一番気になっていたのは竹村京氏である。国立国際美術館の「Undo, Redo わたしは解く、やり直す」で初めて作品を鑑賞した。壊れた食器などをオーガンジーでくるみ、壊れた箇所に上から刺繍を入れた修復シリーズが代表作となっている。会場に入って来られたのを見ると優しそうな女の人で、修復シリーズのイメージ通りだなと思った。しかし拝見していると、にこにこされているが目に力があって、座り方もカジュアルで、聴衆を引っ張っていくような話し方をされていて、だんだん強い人だな、という気がしてきた。藤本氏が、人間が物を直すことについて批判的な意見を口にされると、にこにこされながらも素早くマイクを手にされたのが印象的だった。
今回の修復シリーズの作品を見ていると、オーガンジーの下の物についた傷の部分と、オーガンジーに施された刺繍部分にズレがあって、どうしてだろうと疑問だったのだが、竹村氏は修復シリーズについて、完全に元通りに戻すことはできないが壊れた破片をとりあえずまとめて取っておくことによって、いつか直る日が来るかもしれないと語られていて、ミイラみたいだなと思ったのだが、傷と刺繍のズレも、フォローがいつも傷と噛み合い、完全に傷を癒すとは限らないということなのかな、と考えた。
竹村氏とお話できる機会があるかな、と質問を考えていたが(人間を修復したいと思いますか?)、質疑応答の時間はなかったので残念だった。でもアーティストの方のお話を直接聞けたのは初めてでとても面白かった。
4階のコレクション展に毛利氏の作品が新しく展示されていた。
帰りに日記を捜しに高島屋に行ったら、見たことある色合いの陶が飾ってあって、西條茜氏の作品が販売されていた。
今回も世界をタイトルに持つ曲を集めた世界プレイリストを作って行ったが、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTの「世界の終わり」を聴きながら、ミッシェルが活動していたのも1990年代から2000年代にかけてだから、今回の展覧会のアーティスト達と同じ時期に、ミッシェルも世界と向き合っていたんだなと思った。
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