開館30周年記念 未来/追想 千葉市美術館と現代美術
千葉市美術館|千葉県
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当館30年の歴史は、日本現代アートの歴史、素晴らしい充実感
千葉県美の高島野十郎展とあわせて、千葉市美術館の初訪。
浮世絵コレクションは有名であるし、東京都美術館の田中一村展では千葉時代の当館所蔵作品が多数来ていたことも記憶にあった。そんな当館、現代美術はコレクションの3本柱のひとつ、ということで、この30周年記念展。出品総数は約180作品と量は多く、中味の充実度も高い。垂涎のコレクションに出会い、大いに感激した。
まず、企画展8階のスタートは「具体」から。
入口すぐに、岡部あおみ監修「田中敦子―もうひとつの具体」(1998年)の45分尺のビデオが流れる。全部見る時間はなく部分的にだが、生前の田中敦子の制作シーンでは描いた円に線を加える緊張感、そして夫金山明氏との関係など、実に面白い内容である。展示は、田中敦子、白髪一雄のネットリ絵具の足描き絵、金山明のラジコン画、と、戦後アヴァンギャルドのど真ん中ストレートで本展が始まる。
そして、桂ゆき、「実験工房」、デュシャンと瀧口修造、草間彌生、と部屋が続く。
この辺りの序盤では、実験工房の福島秀子の5点の純粋抽象画の、伸びやかな強さに惹かれる。草間は、渡米前の20歳代の初期作品が瑞々しさ、40歳頃からの「無限の網」シリーズの抑制きいた熱量、印象的だ。次の部屋、今井俊満・堂本尚郎の日本人アンフォルメル作家の「いかにも」的作品は、戦後前衛の時代感の懐かしいアーカイブ、と言うと失礼か。
こうして、展示構成は、振出しの具体美術と円環的につながってくる。個人的には、30周年記念として熟慮を尽くしたであろうキュレーションに、どハマりしそうな予感が込み上げてきた。
7階に下りると、時代が下り昭和40年代から。
最初は、小学校体育館程の広々とした空間。その3方の壁には、河口龍夫による須磨海岸の波うち際プロジェクト、26枚連続写真作品《陸と海》。偶々、この空間にひとりだけとなった。死生観が漂う、逃げ出したい様な、いつまでも居たい様な、不思議な時空である。
続くは一転して、やかましいイズムの回想の場。
まずはパフォーマンスアートから、ハイレッドセンターの登場。高松次郎、赤瀬川原平、中西夏之の3人で結成されたパフォーマンス・グループ、三人の頭文字(高High・赤Red・中Center)を英語読みした名称。と、そこまでの知識はあったが、中西夏之のドローイングを見るのはおそらく初めて。白・黒・紫・黄緑のアクリル塗料の色が織りなす、広大な平面の一角を矩形に切り抜いたかのような図像イメージは、網膜に残影を残す生命感が面白い。
続いて登場し対抗するのは、コンセプチャルアート。
河原温の「日付画」で囲まれる回廊トンネルを、観者は歩いて「通過」することになる。これは、巧い仕掛けだと思う。外郭を破り拡張し続け飽和に至ったモダニズムの更新の歴史は、今の視点からは、アート進化の「通過」プロセスであった、と体感させる仕掛け。本展のキュレーションは、そんな含意を企図していると感じる。
最後の部屋は、70年と80年代、辰野登恵子と吉澤美香、二次元と三次元。
このコラボは、肩意地はったモダニズムをひととおり通過した後の、力が抜けた時代の到来を表現する。それまでのイズム、イズム、では、コラボなんて成立しなかったね、と楽しくオープンに語りかけてくる。で、今はどうなの、それは up to you 、で一旦終了。
以上の当館30周年の回顧は、日本の現代美術の歴史絵巻のようだ。
コレクション作品で、現代美術の生成と展開のストーリーを、密度高く完結する。甚だ感動的である。
そのほかに、1階には立体作品、5階には常設展もある。
30周年企画展の隙のない構成からは外れるが、こちらにも良作が並ぶ。とはいえ、ピックアップしたいのは、河口龍夫のインスタレーション作品《蓮の時・葉緑素》。ひと部屋の三面の壁を飾るのは、こちらは鉛の蓮の花。企画展のアンコールとして、死生観の漂う時空体験を再び、である。
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